墓じまい手続きで必ず必要な改葬許可証とは?申請から取得までの重要ポイントを解説!


墓じまいは少子高齢化や核家族化が進む現代で増えている、先祖代々のお墓を維持することが難しくなった家庭の多くが選択する新しい供養のかたちです。

墓じまいとは、お墓を撤去し、更地にした土地を墓地管理者に返還することを指します。撤去したお墓の中の遺骨は新たな場所で改葬する必要がありますが、その際に市区町村の改葬許可の証である「改葬許可証」が必要となります。

本記事では、墓じまいに欠かせない「改葬許可証」に注目し、取得の手続きやその後の流れ、トラブル回避のための注意点、墓じまいの費用についても解説していきます。

目次

墓じまいとは?改葬許可証が必要な理由

墓じまいとは、先祖代々のお墓を撤去し、更地に戻した土地を墓地管理者に返却する手続きのことをいいます。 その手続きでなぜ「改葬許可証」が必要になるのでしょうか

改葬許可証が必要な理由

墓じまいに改葬許可証が必要な理由は「墓地、埋葬等に関する法律」に定められています。

第五条  埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。) の許可を受けなければならない。
引用:e-gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」

墓じまい(改葬)を行う際には市区町村長の許可が必要だということが法律で定められており、その許可の証が「改葬許可証」なのです。

改葬許可証のなしの墓じまいはどうなる?

「改葬許可証」は、墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)第5条に基づく公的書類です。遺骨を現在の墓地から他の場所へ移動する際に必要となる重要な許可証で、この許可証なしで行う改葬は法律違反なのです。

無許可で改葬を行った場合、刑法第189条「墳墓発掘罪」違反として、懲役(2年以下)が科せられる場合があります。

改葬許可証の様式

では「改葬許可証」にはどのようなことが記載されているのでしょうか。

墓地、埋葬等に関する法律施行規則」で規定する、市区町村長が改葬の申請に対して発行しなければならない書類として定められているのが下記様式です。

出典:e-gov法令検索:墓地、埋葬等に関する法律施行規則 別記様式第3号

ただ、具体的な様式の裁量は市区町村に任されているため、市区町村によりその地域の人口規模や改葬の頻度、他の行政手続きなどを考慮し、最も効率的な様式をそれぞれ定めているようです。

ただ、共通する記載項目としては

  • 故人の情報
  • 現在の埋葬地
  • 改葬先
  • 改葬申請者

などがあり、本質的な目的は全国共通で、記載項目は改葬許可申請書とほぼ一致しています。

改葬許可証の取得に必要な書類と手順

改葬許可証の取得には下記の書類が必要です。

  • 改葬許可申請書
  • 埋葬証明書(改葬許可申請書に埋葬証明欄がない場合)
  • 受入証明書
  • 墓主の改葬承諾書(改葬申請者と墓主が異なる場合)又は委任状

書類の取得方法及び内容を確認していきましょう。

改葬許可申請書

市区町村により様式が異なります。市区町村役場窓口で配布していますが、多くの市区町村ホームページでダウンロードが可能です。

改葬しようとするお墓に入っている全員の情報を申告する必要があり、上記岡山県倉敷市の書式では4人分記入できる仕様となっていますが、1人につき1枚必要な市区町村もあったりと、それぞれ異なりますので様式に従い記入しましょう。

古いお墓の場合は詳細がわからないご遺骨もあるかと思います。詳細が分からない場合の記入方法も市区町村によっても違いますので、不明な項目に関しては市区町村窓口に確認後記入するようにしましょう。

埋蔵証明書

遺骨の現在の墓地への埋蔵を証明する書類です。通常墓地管理者が作成することになっていますが、現在は墓じまいを行う方が作成し、墓地管理者には署名・捺印のみ依頼することも多いようです。

また、上記岡山県倉敷市のように「改葬許可申請書」に現在の墓地管理者の埋蔵証明欄を設けている市区町村も多いようです。その場合埋蔵証明書の提出は不要です。

「埋葬」「埋蔵」「収蔵」の違い

「埋葬」「埋蔵」「収蔵」似た言葉ですが、何が違うのでしょうか。

土葬は「埋葬」、火葬後葬られているの遺骨は「埋蔵」され、火葬後納骨堂に納められている遺骨は「収蔵」されているという表現になり、明確な違いがあります。

受入証明書

遺骨を新しい供養先で受け入れることを証明する書類です。「受入証明書」は受入先市区町村窓口で取得できるもの、改葬先で用意してあるものといろいろな場合があります。

また、いくつかの市区町村のホームページなどで確認したところ、「受入証明書」の提出を必要としない市区町村も6割程度見られました。

出典:新潟県糸魚川市ホームページ

墓主の改葬承諾書(又は委任状)

墓主と異なる人が改葬許可申請を行う場合の墓主の改葬に対する同意を証明する書類です。市区町村により「改葬承諾書」や「委任状」など名称は異なります。

様式は市区町村窓口やホームページで取得可能ですが、任意の様式でも良い場合があるので市区町村に確認しましょう。

改葬許可証取得の手順

「改葬許可証」の取得は以下の流れで進めます。

改葬に必要な書類一式の準備

  1. 現在の墓地がある市区町村役場窓口もしくは市区町村のホームページで「改葬許可申請書」を取得、必要事項をもれなく記入します。
  2. 現在の墓地の管理者から「埋蔵証明書」を取得または「改葬許可申請書」の墓地管理者に署名捺印欄に署名・捺印を依頼します。事前に、墓地管理者には連絡・相談し、スムーズに手続きが進められるよう準備しておきます。
  3. 必要な場合は改葬先にて「受入証明書」を取得します。
  4. 申請者と墓主が異なる場合には必要に応じて墓主の承諾書を準備します。

改葬許可証の申請と交付

必要書類をすべてそろえ、現在の墓地がある市区町村の役場へ提出します。問題がなければ、1~2週間で改葬許可証が交付されます。交付手数料は市区町村によって異なりますが、無料から数百円程度のことが多いようです。

改葬許可証交付後の流れ

「改葬許可証」が交付されるまでには親族および現在の墓地管理者の理解・同意は必ず得ておきましょう特に共に供養を行う親族の供養方法や場所についての合意は重要です。改葬の許可が下りても親族の反対があればスムーズに墓じまいを進めることはできません。

「改葬許可証」交付後は次のような流れになります。

  1. 現在の墓から遺骨の取り出しを行う
  2. 遺骨の移動
  3. 新しい供養先での納骨

現在の墓から遺骨の取り出しを行う

改葬許可証が交付されて初めて遺骨の取り出しが可能になります。

必要に応じて菩提寺に依頼し閉眼供養(墓石に宿る仏様の魂を抜く儀式)を行い、遺骨の取り出し作業を行います。遺骨の取り出し作業及び墓石解体・撤去作業は事前に石材店に依頼しておきます。

遺骨の移動

改葬先へ遺骨の移動を行います。遺骨の移動手段には次のようなものがあります。さまざまな方法があるので各自の事情に合った移動方法を選びましょう。

自家用車で移動遺骨を破損しないよう厳重に梱包し、座席に固定しましょう
公共交通機関で移動厳重に梱包した上で、周囲に配慮し目立たないよう袋や箱に入れて移動しましょう。
郵送ゆうパックが利用可能。(ヤマト運輸・佐川急便など他の運送会社は遺骨の取り扱いは不可となっています)
納骨サービス遺骨の移動から納骨までを代行する専門業者に依頼します。

新しい供養先での納骨

改葬先に改葬許可証を提示し、納骨を行います。また必要に応じて僧侶を依頼した開眼供養(故人の魂を込める儀式)を行います。

墓じまい・改葬の際のトラブル回避のための注意点

墓じまいや改葬には、業績手続き以外にも親族間や墓地管理者との関係、供養先選びなどで細かい注意点が多くあります。事前に準備しておくことで、スムーズに手続きを進めることができるのです

  • 親族間の同意を得る
  • 墓地管理者との相談
  • 墓石解体撤去作業を行う石材店について

どのような点に注意すればよいのか、具体的に解説していきます。

親族間の同意を得る

墓じまいや改葬を進める前には、親族全員の同意を得ることが不可欠です。特に古くからのお墓である場合や親族が多い場合、それぞれの先祖への思いが異なるため、時間をかけて話し合うことが大切です。

今までお参りしてきた墓が無くなることへのさみしさや墓じまいには費用が掛かることで反対する親族がいることも十分考えられます。話がこじれると墓じまいをあきらめざるを得ないといった事態にもなりかねません。

墓じまいの目的や理由、今後の供養方法などについて具体的に説明し、理解を得ましょう。またこの時に改葬先についても話し合い、場所や供養方法について皆が納得できる改葬先を決めておきましょう

墓地管理者との相談

墓じまいを行う際、墓地の管理者には必ず相談しておきましょう。特に、寺院墓地の場合は、檀家を離れることを意味するため、「離壇料」を支払う必要がある場合があります。

この費用は寺院によって異なり、事前に相談なしに強引に墓じまいを進めた場合、高額な離壇料を請求されるなどのトラブルになりかねません。

現在の墓地管理者には必ず事前に相談し、墓じまいせざるを得ない事情を話したうえで今までの感謝を十分伝え、理解を得た上で、墓じまいを進めましょう

墓石解体・撤去作業を依頼する石材店について

墓石解体・撤去作業を依頼する石材店は菩提寺で指定がある場合もありますが、そうでない場合は必ず複数の石材店に相見積もりを取り、金額やサービスを十分に比較したうえで依頼するようにしましょう。

値段や金額内容を十分に比較検討せずにひとつの石材店だけに依頼してしまうと、高額な作業料を請求されたり、菩提寺の指定通りの撤去作業を最後まで行わないなどのトラブルになりかねません。

必ず複数の石材店のサービス内容や口コミなどを十分に確認したうえで信頼のできる石材店に依頼し、作業完了後もご自身の目で墓地管理者の要求通り作業が行われたかどうかを確認することがトラブルの回避につながります。

墓じまいの費用について

墓じまいにかかる費用には以下のようなものがあります。

墓石の解体・撤去(目安)8~15万円程度(1㎡あたり10万円程度)
閉眼供養(お布施 金額は宗派により異なる)(目安)3~10万円程度
離壇料(金額は宗派により異なりお寺への感謝の気持ちを示すもの)(目安)10~20万円程度
行政手続き(手数料)(目安)無料~500円程度
開眼供養(お布施 金額は宗派により異なる)(目安)3~10万円程度
改葬先でかかる費用(目安)5~200万円程度

上記のうち、改葬先でかかる費用は供養方法によってもかなり違ってきます。

合祀墓血縁のない人たちと一緒に埋葬するタイプの墓(目安)10万円~30万円
集合墓他人と納骨する場所は分かれているが墓標のみ共有するタイプ(目安」20万円~50万円
個人墓個別の区画に納骨。お墓の継承と維持管理は不要。個別の期間が終わると合祀墓に移される。(目安)40万円~150万円
樹木葬花や樹木を墓標として周辺に遺骨を埋葬(目安)20万円~150万円
納骨堂建物の中に遺骨を納める施設。アクセスしやすい場所にあることが多い。(目安)50万円~200万円
散骨遺骨を粉状にして海や山などの自然に撒く方法。業者に委託して散骨するプランや乗船して遺族が自分で撒くプランもある。(目安)5万円~30万円

墓じまいとはかなりの金銭的な負担がかかります。1人での負担が無理な場合は

  • 親族の協力を仰ぐ
  • より負担少ない供養先を選択する
  • 葬儀などに用途を限定した利子の低い「メモリアルローン」を利用する

などの対策を考えましょう。

FAQ

墓じまいの行政手続きは自分で行わないといけませんか?

市区町村窓口やホームページで取得できる「改葬承諾書」もしくは「委任状」などの書類があれば、代行者の申請は可能ですし、行政書士や墓じまい代行業者に依頼することもできます。

現在の墓地のある住職に墓じまいを申し出たところ、拒否されました。埋蔵証明書を作成してもらえない場合、墓じまいは不可能なのでしょうか

埋蔵証明書が発行されない場合、埋蔵証明書に代わる書面で代用できます。代用できる書面は今まで支払った管理料の領収書など、場合により異なりますので行政書士などに相談すると良いでしょう。

以前、他県から現在在住の市に両親の遺骨を改葬し、そのとき改葬許可証をいただいております。そして自分も別で現在の市に自身の墓を購入したのですが、そこに両親の遺骨を移す場合、再度改葬許可の申請は必要でしょうか?

その場合も再度改葬許可証の発行が必要となります。改葬許可証がなければ改葬先への埋葬もできません。

遺体の改葬を行わない散骨は改葬許可証が必要ですか?

自治体ごとに見解が異なりますのでそれぞれの市区町村に事前確認が必要です。散骨自体が新しい「墓地、埋葬等に関する法律」の規定にない行為であるため市区町村ごとに対応が異なっています。

例えば東京都では都民からの散骨に関する手続きについての質問に「法による手続きはありませんが、念のため、地元の自治体に確認することをお勧めします。」(東京都ホームページより)と回答しています。

ま、た法律に規定はありませんが、厚生労働省により散骨に関するガイドラインは定められており、散骨可能な場所は限定されています。市区町村によく確認した上で正しい手続きで散骨を行いましょう。

まとめ

墓じまいの書類手続きはお住まいの市区町村により必要な書式や対応が異なります。書類手続きについての不明点はお住まいの市区町村窓口にご相談しながら進めていきましょう。

墓じまいは、現代を生きる私たちのライフスタイルとご先祖様との調和を図る重要な儀式です。改葬許可証の取得をはじめ、手続きは多岐にわたり大変な作業ではありますが、親族間の協力や十分な事前の準備があれば、スムーズに進められるはずです。

親族や墓管理者の方々とよく話し合い協力を仰ぎながら、より良い供養のかたちを実現していただけたらと思います。

この記事を書いた人

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