年々、墓じまいをする人が増加しています。その理由は、お墓の継承者がいない、お墓の維持管理費の負担が大きいことなどが挙げられます。また、お墓は代々受け継いでいくものという価値観も薄れつつあります。これから墓じまいをしようとしている人は、「曹洞宗(そうとうしゅう)は墓じまいができるのか?」「費用がどれくらいかかるのか?」様々な疑問を持っているのではないでしょうか。墓じまいは、人生で何度も経験することではありません。誰でも初めてのことは不安ですよね。
そこでこの記事では、曹洞宗の墓じまいの費用や具体的な手続きを紹介します。
墓じまいの定義
墓じまいとは、今あるお墓を撤去し更地にした後、土地の使用権を墓地の管理者に返還することです。
墓じまいの際に取り出した遺骨は、新たな供養先に納骨する必要があります。勝手に遺骨を取り出したり、廃棄したりすることは法律で禁じられています。そのため、お墓の引っ越し(改葬)まで終われば墓じまいの完了です。
出典:厚生労働省
曹洞宗とは
曹洞宗とは、鎌倉時代に中国から日本に伝わり、今では全国にいくつもの寺院が点在しています。曹洞宗の教えは「座禅」を根幹としています。日常生活の食事や洗顔なども修行の内と捉えているのです。ここでは概要をご紹介します。
概要
今から800年ほど前の鎌倉時代に、「道元禅師」が正伝の仏法を中国から日本に伝え、「瑩山禅師」が全国に広められ、「曹洞宗」の礎を築かれました。このお二方を両祖と申し上げ、ご本尊「お釈迦さま(釈迦牟尼仏)」とともに、「一仏両祖」として仰ぎます。
曹洞宗で墓じまいできるの?
曹洞宗で墓じまいはできます。ただし、宗門公式によると曹洞宗では一般的に使用されている「墓じまい」という言葉は使用していません。
2、墓じまいについて
(1)宗門公式として墓じまいという用語は用いておりません。
(2)使用している墓地区画を、特段の理由により別の場所へ移す場合、市区町村から墓地改葬許可を得た上で、墓地区画内の墓石を撤去し、原状に復することが必要となります。この場合、墓地撤去費用等の工事費用がかかる場合があります。また、墓地使用規則等が存在する寺院においては、当該規則等で定められた手続や義務を遵守すべき場合があります。墓地使用規則等の有無・内容については、墓地管理者(寺院墓地の場合は菩提寺の住職等)にお尋ねください。
墓じまいの費用
墓じまいの費用相場は、30万~300万円です。曹洞宗だからといくらと決まった金額はなく、一般的な費用相場と同じと考えるとよいでしょう。
墓地の広さや、墓石を撤去する際にクレーン車を使うかなど条件によって費用も大幅に変わっていきます。
費用内訳の大分類
費用内訳の大分類を3つの項目に分けて解説します。
項目 | 費用 |
---|---|
墓石を撤去 | 30万~50万円 |
行政手続きの手数料 | 数百円~1,000円 |
新しいお墓の引っ越し先 | 30万~100万円 |
1.墓石を撤去|30万~50万円
墓石の撤去には、撤去費用の他に以下の項目も費用として含まれています。
- 墓石の撤去:1㎡あたり10万円程度
- 閉眼供養のお布施:3万~5万円程度
- ※離檀料:数万~20万円程度
- 必要書類の発行手数料:数百円~1,500円程度
離檀料について、曹洞宗のホームページでは宗派の決まりはないと明記されています。
疑問や心配事がある場合は、余裕を持って寺院に相談するとよいでしょう。
1、離檀料について
(1)宗門公式としての離檀料に関する取り決めはありません。
(2)特段の理由により離檀される場合において、檀信徒から、離檀料を頂くようになどという指導も行っておりません。
(3)離檀に当たり、これまで先祖代々がお世話になった感謝の気持ちとして、布施を納めてくださる場合がありますが、(1)、(2)に記載のとおり、宗門において統一的な取り決めや指導はありません。地域の風習や慣行、寺院と檀信徒との関係性において、当事者間の話し合いにより決まるものと考えております。
(4)菩提寺との関係について疑問や要望をお持ちの場合は、出来る限り早い段階で、菩提寺にご相談されることをお勧めします。
2.行政手続きの手数料|数百円~1,000円
墓じまいに必要な書類は3つあります。書類によって発行依頼先は異なるので注意が必要です。
書類名 | 依頼先 |
---|---|
埋葬(納骨)証明書 | 今あるお墓の管理者 |
改葬許可申請書 | 各自治体 |
受入証明書 | 新しい引っ越しっ先のお墓の管理者 |
3.新しいお墓の引っ越し先|30万~100万円
墓じまいで取り出した遺骨は、新しいお墓の引っ越し先に納骨しなければなりません。納骨先やお墓の規模やランクによって金額が大きく変わります。そのため、今後どのようにお墓の管理をしていきたいか親族と相談しながら決めましょう。また、亡くなった方が喜ぶ供養方法を選べるとよいですね。
納骨先 | 費用 | 備考 |
---|---|---|
永代供養墓 | 30万~100万円 | 寺院や霊園がお墓を維持管理する |
樹木葬 | 60万~80万円 | 木の下に遺骨を埋葬する |
納骨堂 | 80万~100万円 | 遺骨を骨壺に納めて室内で管理する |
散骨 | 5万~30万円 | 遺骨を粉砕し海や山に散骨する |
手元供養 | 数万~数十万円 | 自宅で遺骨を保管する |
墓じまいする7つのステップ
「墓じまいの手続きってなんだか大変そう」と感じる方も多いかと思います。しかし、これから紹介する7つのステップを順番に踏んでいけばスムーズに墓じまいができるでしょう。
- 家族や親族と十分に話し合う
- 今あるお墓の管理者に墓じまいの相談をする
- 新しい納骨先を決める
- 墓石を撤去する業者を決める
- 改葬許可申請の手続き
- 遺骨を取り出す
- 今ある墓石を撤去し、更地にする
1.家族や親族と十分に話し合う
家族や親族と十分話し合うことが7つのステップの中で最も重要です。墓じまいのトラブルの原因で多いのは、話し合いが十分にできていなかったことが多いです。家族や親族のお墓に対する考え方、住んでいる場所、そもそもなぜ墓じまいする必要があるのかなど、一つ一つ丁寧に進めていきましょう。一人では墓じまいを進めることはできません。まずは相手の話を聞き、自分の意見を伝えていくことが大切です。
2.今あるお墓の管理者に墓じまいの相談をする
今あるお墓の管理者に墓じまいの相談をしましょう。すでに墓じまいをする決意が固まっていたとしても、相談する姿勢が大切です。説明不足や意思疎通が上手くいかずに、これまでの寺院との関係がこじれてしまうのは悲しいですよね。家族や親族と話し合ったときのように、相手の話をしっかり聞くことで誠実さが伝わります。
3.新しい納骨先を決める
墓じまいの話が家族や親族間でまとまったら、新しい納骨先を決めましょう。墓じまいは何度もするものではないので、後悔のない供養方法を選ぶとよいでしょう。また、曹洞宗ではご本山に納骨することもできます。希望する場合は下記へ直接問い合わせてください。
大本山永平寺(だいほんざんえいへいじ)
〒910-1294 福井県吉田郡永平寺町志比
電話 0776-63-3102
FAX 0776-63-3115
大本山總持寺(だいほんざんそうじじ)
〒230-8686 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-1-1
電話 045-581-6021
FAX 045-571-8221
4.墓石を撤去する業者を決める
墓石を撤去する業者は複数選び、相見積もりを依頼しましょう。複数の業者を比較することで、予算にあった業者が見つかります。
5.行政手続き
上記で紹介した、墓じまいに必要な3つの書類を準備しましょう。なお、改葬許可申請書は各自治体のホームページや役所の窓口で入手できます。不安な場合は、事前に問い合わせると確実です。
6.遺骨を取り出す
遺骨を取り出し、閉眼供養を行います。閉眼供養とは、お墓に入っていた故人の魂を抜くための儀式です。
7.今ある墓石を撤去し、更地にする
石材業者が墓石を撤去し、墓地を更地にします。墓地の使用権をお墓の管理者に返還して、墓じまいの完了です。
墓じまいのトラブル実例
墓じまいに関する国民生活センターに寄せられたトラブルの1例を見てみましょう。
Q【墓地】墓じまいをしたいが、管理会社から、指定の石材店以外での工事は認めないと言われ納得できない。
A 回答公営墓地以外では、提携している石材店を指定されることが一般的で、消費者が石材店を自由に選ぶことは難しいのが現状です。
必ず事前に見積もりを取り、不明な点は確認し、納得したうえで工事を依頼しましょう。
■消費生活相談窓口
・消費者ホットライン 「188(いやや!)」番
※最寄りの消費生活センターを案内する全国共通3桁の電話番号
出典:独立行政法人国民生活センター(消費者トラブルFAQ)
今あるお墓は誰が管理しているのかを事前に調べたり、相談したりすることでトラブルを未然に防ぐことができます。他にも寄せられた複数の相談があるので、参考にしてみるとよいですね。キーワード検索で「墓」と入力して検索すると現時点(2024年11月15日)で4件ヒットします。
まとめ|曹洞宗の墓じまい費用は
今回は、曹洞宗の墓じまい費用と具体的な7つの手続きを解説しました。曹洞宗の墓じまい費用は、一般的な墓じまいの費用相場と同じです。最も金額で差が出るのは、新しい納骨先です。家族や親族とよく話し合いながら、墓じまいの準備を進めていきましょう。
墓じまいは複雑で大変そうなイメージですが、7つのステップに沿って進めていけば大丈夫です。焦らず、周りの人と協力しながら納得のいく墓じまいすることが大切です。