墓じまい後の遺骨はどうする?遺骨の改葬先や手続きについても詳しく解説!

近年、少子化・核家族化を背景に墓の継承者がなくなり、2011年の約7万6千件に比べ2022年150,000件を超え、墓じまいは倍以上に増えています(政府統計ポータルサイト:衛生行政報告例)。墓じまいをせざるを得ないものの取り出した遺骨の移動方法や改葬先に悩む人も多いことでしょう。

移動方法や改葬先もいろいろな選択肢があります。供養方法が多様化した今、改葬先の場所、費用、ライフスタイルなどに合わせて選ぶことが可能なのです。

この記事でわかること

墓じまい後の流れと手続きについて

遺骨の改葬先

この記事では大きくこの2つについて解説していきます。

目次

墓じまいと遺骨の取り出し

墓じまいとは現在あるお墓を更地にしてお墓の管理者に土地を返すことです。遺骨を取り出した墓じまい後は、遺骨の新しい供養先を決めなければなりません

適当な供養先が無いからと言って適切な処理方法で遺骨を処分しなかった場合は法律に触れることになります

(墳墓発掘死体損壊等)
第191条 第189条の罪を犯して、死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。(出典:法令リード 刑法191条)

「墓地、埋葬等に関する法律」第4条
第4条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない。(出典:厚生労働省ホームページ

つまり、自宅の庭など墓地以外の場所に遺骨を埋葬することは禁じられています。ただし、海洋散骨をする場合は土の中に遺骨を埋めるわけではないので、「埋葬」にはあたりません。

墓じまいした遺骨を次の場所に移す「改葬」は「改葬許可証」「埋蔵証明書」「受け入れ許可申請書」を市町村に発行してう必要があります

墓じまい後の流れは?

取り出した後のお骨はどうすればよいのでしょうか。

お骨の改葬先によって違ってきますが、まず墓じまい後の流れから説明します。

  1. 石材店に墓石の撤去・遺骨の取り出しを依頼
  2. 閉眼供養
  3. 石材店により遺骨の取り出し
  4. 改葬先に遺骨を移動
  5. 新しい供養先に納骨

石材店に墓石の撤去・遺骨の取り出しを依頼

依頼した石材店に墓石の撤去と遺骨の取り出しを依頼します。依頼するときは必ず合い見積もりを取り、価格・サービス内容などを比較した後依頼するのが良いでしょう。

閉眼供養

「閉眼供養」とは遺骨から魂を抜き取る儀式で、菩提寺の住職に依頼します。

故人の魂を丁重に扱い、墓を撤去する家族の罪悪感を軽減するという目的もあり、一般的にはお墓を撤去するタイミングで行うようです。

閉眼供養をしないと作業を断る石材店もあるようですので閉眼供養は必ず行いましょう

石材店により遺骨の取り出し

石材店が遺骨の取り出しを行います。

骨壺のまま納めている場合と骨壺から遺骨を取り出し土に還している場合があり、土に還した遺骨は布袋や骨壺に納めることとなります。

遺骨の汚れやカビがひどい場合には洗骨を考えても良いでしょう。

洗骨について

「洗骨」は墓じまいは改葬を行う際に、取り出したお骨に付着した経年のカビや汚れを取り除くことです。汚れを取り除いて美しい状態に保つことは個人への供養にもつながります

自分で洗うことに抵抗がある方も多く、専門のサービスを行う業者に依頼する方も多いようです。(目安約3万円程度)

改葬先に遺骨を移動

遺骨の移動方法には下記のようなものがあります。

自動車で運ぶ座席から骨壺が落下しないよう、運転手以外の人が抱えるか、シートベルトで固定します。
公共交通機関で運ぶ電車やバス、飛行機など人の目に触れると不快感を与える恐れがあるので破損しないよう梱包して人の目に触れないよう覆います。
ゆうパックで郵送宅配サービスで遺骨を扱うのは「ゆうパック」のみ。運搬中に骨壺が割れないよう慎重に梱包します。
NPO法人に頼んで運ぶNPO法人によっては送骨から納骨供養までをフォローしてくれます。
(例:NPO法人 納骨支援の会 など)

自動車での移動が一般的であるようです。

新しい供養先に納骨

改葬先に「改葬許可書」を提出し、遺骨を納めます。仏式であれば「開眼供養」を行います。

遺骨の新しい供養先を選ぼう

  • 永代供養墓
  • 樹木葬
  • 散骨
  • 手元供養

永代供養墓

永代供養墓とは、お墓参りできない家族に替わって、霊園や寺院が管理や供養をしてくれるお墓のことです。家族はその後の遺骨管理や維持、継承を霊園や寺院に託すことができるのです。

他の遺骨と一緒に供養する「集合墓」、一定期間遺骨を残しその後合祀する「納骨堂」などがあります。

子孫に墓の維持管理の負担を掛けたくない、墓の継承者がいない、などのお悩みが解決可能です。

その一方で、個別でのお参りが出来ない、将来的には合葬される(一般的には三十三回忌や五十回忌まで)、土中に埋葬した場合遺骨を返してもらえないなどのデメリットがあります。

下記のような選択肢があります。

一般墓(目安)80万円~250万円通常の個別の墓に永代供養を付けたもの
集合墓(目安)1人当たり20万円~50万円屋外で他の人の遺骨と一緒に埋葬されます。
墓標は一つで個々の遺骨の収納スペースがあります。
合祀墓(目安)一人50万円~30万円他人の遺骨と一緒に供養される形式のお墓です。
納骨堂(目安)一人50万円~100万円屋内にロッカーのような個別の納骨施設を持つ建物です。棚型・ロッカー型・自動搬送型などいくつか種類があります。

樹木葬

樹木葬は樹木のもとに埋葬され、やがて自然に還る供養方法になります。遺骨を埋葬するだけの狭いスペースで住み一般的なお墓より費用を抑えることができます

平均購入価格は60~70万円程度(目安)。

樹木葬により埋葬方法が異なります。

合祀型骨壺から遺骨を取り出し他人の遺骨とまとめて埋葬する
共同埋葬型骨壺などに入った遺骨をまとめてひとつの大きなスペースに埋葬する。
個別埋葬型骨壺などに入った遺骨を個々の区画に埋葬。

お墓があるわけではなく樹木に手を合わせるかたちになりお墓参りをした実感を持ちにくいことや、樹木自体も枯れたりする可能性があるといったデメリットもあります。

散骨

散骨とはお骨を粉骨した後、空や海など自然に向けて粉末状にした遺骨をまく葬送方法です。

後々の墓の管理の心配もいらず、墓の維持にお金もかからない散骨という選択もあります。
遺骨をあとに残さず個人を偲ぶことが出来ないこの供養方法には抵抗がある方もいらっしゃるようですが、近年増加傾向にあるようです。

日本では埋葬法を行う際の手続きに関する法律(墓埋法)があります。

墓埋法(墓地、埋葬等に関する法律)は遺骨を粉骨にして撒く散骨は「遺骨の遺棄」には当たらないとしています。ただ、墓地以外の土の中に焼骨した骨を埋めることは違法となるので注意しましょう。

散骨にもいくつかのパターンがあります。

砕骨から散骨まですべて自分で行う火葬場から引き取った遺骨を自分で粉砕。散骨場所も自分で探す必要がある。(下記自宅で散骨時の注意点参照)
一部の作業を業者に依頼遺骨の粉砕や散骨場所の選定など一部の作業を業者に依頼。
すべての作業を業者に依頼故人の遺骨の粉砕が心理的にも負担な方は業者にお任せした方がよいでしょう。
自身で散骨時の注意点

すでに埋葬された遺骨を引き取って散骨する場合には、改葬時同様「改葬許可書」(自治体にて入手可能)が必要となります。
また、ご自身で砕骨・散骨する場合には砕骨・散骨予定地の砕骨・散骨可否の条例確認が必要です。また他人の私有地や人の多く集まる場所などは避けましょう

海洋散骨と海以外(樹木・海外・宇宙など)の散骨がありますが、海洋散骨を取り扱う業者が多いようです。

業者に依頼する海洋散骨の費用は(目安)5万円~30万円程度で、1家族単独で船を貸し切り散骨するか、業者に代理で散骨を依頼するかで費用の違いがあります。

手元供養

手元供養とは、自宅や身近に遺骨を置いて故人を偲ぶ方法です。田舎のお墓を継承できない、マンション暮らしで仏壇が置けないなどのライフスタイルから広まった比較的新しい供養方法になります。

個人を身近に感じられる、コンパクトで保管場所に困らないといったメリットもありますが、親族に反対されるケースも少なくないといったデメリットもあります。

また手元供養を行う前に、ご自身で遺骨を管理できなくなった時のことを決めておかないと、いざというときに残された人が遺骨の保管・埋葬に困ってしまうことになります

手元供養には下記のような方法があります。

骨壺ミニサイズの骨壺に遺骨・遺灰の一部を納めて自宅に保管する方法。骨壺は素材やデザイン、大きさでいろいろなものが選べる。
アクセサリー少量の遺骨・遺灰をペンダントやブレスレットに入れて身に着けるタイプが人気。数珠やキーホルダータイプもある。
手元供養 分骨時の注意点

手元供養の多くの場合遺骨を分骨することとなります。分骨には下記書類が必要となります。

①火葬場で分骨するとき

「分骨証明書」あるいは「火葬証明書(分骨用)」を火葬場で発行してもらう

②お墓などの遺骨から一部だけ分骨する場合

「分骨証明書」を墓地管理者に発行してもらう

手元での遺骨保管に法的規制はありますが、お墓を墓地区域以外に作ることを禁じられているため上記のような書類が必要となるのです。

まとめ

お墓や遺骨に関する選択は、私たちの祖先に対する敬意を表す大切な行為です。

決して安易に決めてしまうことなく、十分に親族と話し合い、皆が納得できる遺骨の新しい供養先を見つけることが墓じまいを成功させる最良で唯一の方法といえるでしょう。

この記事を書いた人

終活専門メディア「終活ガイド」は、終活やお葬式、遺品整理に関する専門的な情報やサービスを紹介するWebメディアです。豊富な知識をもつ編集部が、終活やお葬式、遺品整理に関するアドバイス、最新ニュース、専門的な知識などをわかりやすくお届けします。

目次