遺品整理が必要となった場合、ほとんどの人が直面するのが「捨ててはいけないものと捨てていいもの」の判断ではないでしょうか。基本的に、遺品整理には期限はありません。そのため焦る必要はないのですが、遺産相続や行政に関する手続きなどの場合は、早めの対策を取っておくほうが安心です。
ここでは遺品整理をする際に、捨ててはいけないものの判断が難しい場合の対処法や判断する時の注意点に焦点を充てて分かりやすく解説していきます。ぜひ、参考になさってみてください。
- 遺品整理で何を捨てていいものかいけないものかわからない人
- 遺品整理で捨ててはいけないと判断に迷ったときの対処法が知りたい人
- 遺品整理で捨ててはいけないものと判断するときの注意が知りたい人
遺品整理で捨ててはいけないものは3種類
遺品整理をする場合はやみくもに始めてしまうと、誤って捨ててはいけないものまで捨ててしまい後悔する原因になってしまいます。後悔するだけで済むならまだいいのですが、あとで大変なトラブルに発展してしまうと厄介です。
そうした後悔やトラブルに発展しないためにも、遺品整理を始める前に必ず必要なものを分類しておくことが重要になってきます。遺品整理で捨ててはいけないものは、大きく分けて以下の3種類です。
- 【法的】に必要になるもの
- 【手続き上】で必要になるもの
- 【親族間】でのトラブル防止
尚、3つに分類していますが、遺品の中にはどれにも属するものも出てくることがあります。特に「法的」に必要になるものと「手続き上」で必要になるものは、遺品によってはどちらにも属する可能性が出てくるので、必要に応じて使い分けるようにしましょう。
【法的】に必要になるもの
遺品整理を始める前にまず最初にしておくべきことは、遺言書やエンディングノートの有無を確認することです。特に遺言書は、遺産相続に関して誰にどう分配するかなどの非常に重要な事柄が記されています。それだけに法的にも非常に拘束力を持つものです。
尚、遺言書には「公正証書遺言」「秘密証書遺言」「自筆証書遺言」の3つの種類があり、自筆証書遺言以外は公証役場に保管されます。自筆証書遺言は任意であるため、自宅などに保管している場合がほとんどですが、法務局に保管しているケースもあるので、できれば予め聞いておくことがおすすめです。
有価証券や保険証券などは現金と同様に、相続に関する重要財産です。これを誤って捨ててしまうと、親族間などでも相続の権力争いまで発展することもありますので、絶対に捨ててはいけません。株式や投資信託などは相続人に権利が引き継がれ、配当金も相続税の対象になります。
保険証券も、保険金請求の際に必要になりますので、必ず取っておきましょう。
【手続き上】で必要になるもの
身分証明書はあらゆる場面で必要になります。運転免許証・クレジットカード・公共サービスなどの場合、故人が亡くなってもきちんと手続きしないと勝手に解約はされません。解約の手続きで身分証明書は必要になることが多々ありますので、大切に保管しておきましょう。
預金通帳は、故人のお金を引き出す際に必要になります。銀行の預金通帳は、銀行側で本人が亡くなったことが分かった時点で、口座は凍結され引き出しができなくなります。凍結を解除しお金を引き出す場合は、預金通帳と一緒に、キャッシュカードやクレジットカードが必要です。
預金通帳は各種手続きに必要になるだけでなく、故人のお金の流れを把握する有益な証拠資料になります。ローンの有無など、どのような取引があったかなどが預金通帳だけで、かなり明確な確認ができるので遺品整理の際には真っ先に確認しておきましょう。
個人の水道光熱費などが残っている場合、その支払いは相続人が故人に代わって支払わなければいけません。解約手続きなど速やかに行う必要があります。未払いなどのリスクを出さないためにも、請求書や領収書などは手続き完了するまで大切に保管してください。
【家族間】でのトラブル防止
デジタル遺品とは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に保存されているデータのことです。例えば、SNS利用時のアカウントやパスワード、メールのやり取りや写真、動画などの情報は大切な個人情報なので、パスワードを変更したりバックアップを取っておくなどの処置が必要です。
また暗号資産など個人の資産が分かるデータも含まれていることもあるので、あらゆる情報の入手のためにもデジタル機器のデータ消去や解約などは、ほとんどの処置が終わるまではしないように気を付けましょう。
故人がレンタルしていた本やDVDなどは、見つけた時点で早急に返却しなければいけません。気付かず放置していて、延滞料金が発生することもあります。またWiFiルーターやケーブルテレビの受信器、ウォーターサーバーなどのリース品も、ほとんどは提供先のステッカーなどが貼ってあるので確認しておきましょう。
故人がいつも付けていた腕時計や、日々記していた日記、親しい人とやり取りした手紙など、遺族にとっても思い出が詰まっている品もあります。こうしたものはどれも捨ててはいけないものに思えてしまうでしょう。しかし、保管場所が限られていたりずっとは置いておけなかったりする場合は、とりあえず一ヶ所にまとめておきます。後日遺族や故人の知人や友人など、分かる範囲内で連絡を取り、貰ってもらえるものは譲るなどするのも得策です。
私も父が亡くなった際に生前父とやり取りした手紙などは、大切に今でも保管しています。たまに当時の手紙を読むと、改めて親の私に対する想いがわかって胸が熱くなり思いです。
どうしても保管が難しいものは、写真などに撮っておいたりコピーするなどしてデータ化しておくといいでしょう。あとでいつでも思い出を忍ぶこともできますし、親族間で共有もできます。
現金は有価証券などと同様、故人の遺産ですので相続対象になります。現金を故意に捨てる人はいないと思いますが、まとまった額の場合は金庫や鍵のかかる引き出しやタンスなどに仕舞われている場合もあるので入念に確認しましょう。
財布の現金はもちろん、ズボンやYシャツのポケットに無造作に入っている場合もあります。また、ヘソクリなどで本の間に挟んであったりも考えられますので、故人がよく使っていた身の回り品は慎重に確認してください。
遺品整理で捨てていいものいけないものの判断と対処法
遺品整理で捨ててはいけないものと判断できるものはすぐに捨てられますが、中には判断に悩む遺品もたくさん出てきます。遺品によっては非常に価値のある物だった場合、その価値を知らないと安易に捨ててしまいかねません。
あとでプレミアが付くような価値があるものと分かったときは、かなり後悔します。このようなことが起こらないようにするためにも、安易に貴重品を捨ててしまわないための対処法を以下の2点に絞りました。
- 生前に捨てないでほしいものを聞いてリスト化する
- 遺言書やエンディングノートの有無を確認する
生前に捨てないでほしいものを聞いてリスト化する
一番いいのは生前に捨てないでほしいものを聞いておくことです。「残してほしいもの」「捨てていいもの」を聞いてリスト化しておくと、いざ遺品整理する際に非常にスムーズに進めることができます。
できればリスト表を書いた紙を壁に貼っておき、日々の生活の中でこれは残しておいてほしいと思ったものがあったり、新たにそういう品物ができた場合に都度、リスト表に本人に追記してもらいましょう。
少し不謹慎に感じるかもしれませんが、意外とこういうことが後に非常に役に立つ可能性もあります。不慮の事故で突然いなくなることがあったりすると、冗談半分でも壁に貼っていたリスト表が役に立ったということもあり得ない話ではありません。
これにより、本人の生前のその品物に対する思い入れも分かるので、聞いておけることは聞いておきましょう。
遺言書やエンディングノートの有無を確認する
故人が亡くなったあと、遺言書やエンディングノートが遺品整理の際に出てきたということもあるでしょう。しかし、たくさんの遺品の中に紛れてしまい、見つけられずにゴミと一緒に捨ててしまっている可能性も否めません。
このようなことがないように、遺品整理を始める前にまず遺言書とエンディングノートがあるかどうかの確認から始めてください。
遺言書に書かれる主な事柄 | 遺産の分割方法・故人の死後にしておいてほしい希望等 |
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エンディングノートに書かれる主な事柄 | デジタル遺品に関する希望等(法的拘束力がないことが多い) |
遺言書には相続に関する故人の意思が記されています。遺産の分割方法や故人の死後にしておいてほしい希望などが記されていることもあるので、相続人はこの意思を尊重して行動するべきです。
またエンディングノートも、デジタル遺品に関する希望が書かれていることもあります。法的に拘束力がないことでも、故人にとっては大切にしてほしいものもあるものです。こうした故人の思いを把握して、希望に沿うようにすることも故人に対する供養になります。
遺品整理で知っておきたい注意点
遺品整理は故人との思い出がよみがえり、どれもこれも捨ててはいけないものに思えてくるものです。しかし、その思いに駆られてしまうと、ほとんどが捨てられず手付かずの状態になってしまいます。残しすぎると、やがては後世に影響することも考えなければいけません。
このような事態を避けるためにも、以下のポイントを抑えて実行していきましょう。
- 明らかに捨てていいと判断できるもの(後世に影響しないもの)を先に捨てる
- 遺品整理スケジュールを作る
- 迷ったら「とりあえず保留」
子供や孫、ひ孫の代になったときに「これ、どうするの?」と思う遺品が多すぎると、その処分にまた悩ませることになります。自身の死後も持ち物が遺品になりますので、祖父母の遺品と親の遺品がまとめて孫やひ孫の負担になることは避けたいですよね。
以上の3つのポイントを詳しく解説していきましょう。
明らかに捨てていいと判断できるもの(後世に影響しないもの)を先に捨てる
ある程度は家族間で相談しながら進めた方がいいですが、一目見て明らかにゴミであるものは先にどんどん捨てていくと、必要なものの整理をする際に余計な手間にならずに済みます。
先に残しておきたいものを探し始めると、いつの間にか思い出に浸る時間になってしまい大幅な時間のロスになるので注意が必要です。
遺言書やエンディングノートの有無をまず先に確認しましょうと前述しましたが、もし家族数人で遺品整理を始めるときは、その家族の誰かに遺言書やエンディングノートを探す役回りを引き受けてもらいます。その間に、ゴミとわかるものをどんどん捨てるという風に手分けしてやると整理が捗るのでおすすめです。
もし、一人で遺品整理をする際にはやはりまず遺言書やエンディングノートの有無を確認することから始めてください。
遺品整理スケジュールを作る(おすすめ)
遺品整理を効率よくスムーズに進めるには、スケジュールを作っておくとストレスなく作業が進めます。
相続に関する手続きは急ぐ必要があるものもあります。例えば、相続人が亡くなってから3ヶ月以内にする相続放棄手続きや、相続税の申告期限は10ヶ月以内です。このような手続き上の期間を目安に遺品整理の作業を始める日程や、何から始めるなどの段取りを調整しておくことをおすすめします。
遺品整理を始める一般的なタイミング | 葬儀後・各種手続き・四十九日法要後 |
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期限付きの遺品整理の目安 | 相続人の死後から3ヶ月以内・相続放棄手続き・相続税の申告期限10ヶ月以内 |
迷ったら「とりあえず保留」
遺品整理には捨ててはいけないものや捨てていいものの判断には、どうしても時間がかかるものです。思い出の品などは特に、家族間でもその品物に対する思い入れが異なります。早く作業を終えたいばかりに、安易な判断で捨ててしまうとあとで後悔するので、迷ったら「とりあえず保留」にしておきましょう。
遺品整理するときに、「保留箱」などを作っておいて迷った物をその中に入れていきます。ある程度の作業が終わったときに、保留箱の中身を家族間で確認して相談しながら決めるといいでしょう。一人で遺品整理をするときも、この方法であとでじっくり判断するようにしておくと、冷静に判断することができます。
尚、箱に入らない大きなもの、例えば家具や家電といったものも迷う品物の一つです。この場合は、部屋が複数あるときは、保留するものをまとめて置いておく部屋を決めてください。一部屋を保留品の置き場所にするのです。こうすれば大きなものも小さいものもまとめて管理できます。
1Rなど一部屋しか部屋がない場合は、どこかその部屋の一角にまとめて置く場所を確保するのです。部屋には置いておけない場合は家の外に車庫や倉庫があれば、その場所を保留品を入れる場所にしてしまいます。車庫や倉庫がない場合は、ベランダに置くなども一案です。この場合は、雨除けになるように大き目のビニール製のカバーのようなものを被せておくなどの配慮をしましょう。
【まとめ】遺品整理は感情に流されないこと
今回は、遺品整理をする際の捨ててはいけないものが何か、判断に迷ったときの対処法や注意点を紹介してきました。まずは、有価価値があるものなどは先に進めておいた方が安心です。それと、一番大事なことは遺品に関する感情に流されないことです。
大切だった人の遺品はどれもが思い出があり捨てづらいですが、その感情に流されてしまうとやがては遺留品だらけになってしまいます。そうなると遺品整理がもっと大変です。
- 「生前に捨ててはいけないものを聞いておく」
- 「遺言書やエンディングノートを先に確認する」
- 「明らかに後世に影響しないと判断できるものは捨てる」
など、基準を決めておきましょう。遺品整理スケジュールは特に有効な方法です。ぜひ、参考にしてみてください。