墓じまいした後の土地はどうなる?売却できる?墓じまい後の土地について要点を解説

少子高齢化の進展や家族形態の変化により、先祖代々のお墓の維持が困難になるケースが増加しています。特に都市部では、遠方での生活や後継ぎ不在などの理由から、墓じまいを決断される方が年々増えているのです。

しかし、墓じまいを考える際に重要なのが、墓じまいした後の土地の取り扱いについての正しい理解です。多くの方が「墓じまいした後の土地は売却可能」と考えがちですが、そうではありません。

墓じまいした後の土地は売却できず、必ず管理者に返還しなければなりません。

墓じまいした後の土地が売却できない理由について詳しく解説していきます。

目次

墓じまい後の土地ー土地の所有権についてー

寺院や霊園といった墓地で利用者が有しているのは土地の所有権ではなく、土地の「永代使用権」であり、第三者への譲渡は禁じられています。無断で取引すれば使用権の取り消しにもなりかねません。

土地の所有権について

お墓を建てる土地は、以下の理由で売買できません。

  • 土地の所有者は墓地管理者であり、使用者が持つのは「永代使用権」のみ
  • 管理者の承認なしでの取引不可
  • 譲渡禁止特約(後述します)の存在

これは墓地の適切な管理と尊厳の保持を目的とした寺院や霊園との契約による規制なのです。

永代使用権について

お墓の利用権利の本質は「永代使用権」にあります。名称から「永久に使える権利」と誤解されがちですが、実際には以下のような特徴があります。

  • お墓の土地そのものの購入ではなく、使用権の取得
  • 世代を超え継続使用できる権利
  • 法律に明記された権利ではなく、契約による権利
  • 霊園や寺院の管理者により契約内容が異なる

墓地を購入する場合、契約内容を熟読し、規則や義務の内容をよく確認しておくことが重要です。契約によっては維持管理料の滞納で永代使用権が一定の期間後に消滅する場合もあります。細かく内容を確認しておきましょう。

永代使用権の特徴と制限

譲渡・貸与の制限事項

墓地の永代使用権には次のような制限事項があります。

  • 家族や子孫への継承は可能
  • 第三者への譲渡や貸与は原則禁止
  • 無断譲渡は権利取り消しの対象
  • 相続以外での名義変更には管理者の許可が必要

永代使用権とはいっても、無条件で永続的に使用できる権利ではないことに注意が必要です。

権利の消滅事由

次のような事由で墓地の永代使用権は消滅します。

  • 長期間(通常3年以上)の連絡不通
  • 管理料などの使用料の未払い
  • 規定年数以上の管理放棄
  • 契約違反や不適切な使用
  • 墓地の開発や移転が必要になった場合

これらの事由に該当する場合、事前通知なしに使用権が取り消されることもあります。管理者とは密に連絡を取り適切な管理を心がけましょう。

永代使用料

永代使用権を取得するときに支払う永代使用料は墓地を契約したとき1度だけ支払います

(目安)50万円~80万円程度が平均的な値段ですが、立地や区画の大きさによって異なります。(※永代使用料は1㎡あたりの単価×土地の面積で決まります。地価に比例するため都会に行くほど値段は上がります。)

永代使用料は途中で使用をやめても返金はされません。それは墓じまいのときも同様です。

また、似た言葉で「永代供養料」というものがありますが、全く意味が違うものになりますのでご注意ください。

  • 永代使用料墓地を世代を超え継続使用する権利を得るため支払うお金
  • 永代供養料永代にわたり遺骨の供養をお願いするために支払うお金

譲渡禁止特約

ほとんどの墓地契約には「譲渡禁止特約」が含まれています。譲渡禁止特約とは、第三者への譲渡を明確に禁止する条項です。下記が譲渡禁止特約の文例です。

第●条(譲渡禁止)
甲および乙は、事前に相手方の書面による承諾がない限り、本契約により生じた契約上の地位を移転し、または本契約により生じた自己の権利義務の全部もしくは一部を、第三者に譲渡し、もしくは第三者の担保に供してはならない。(譲渡禁止特約の例文例:契約ウォッチより引用)

第三者への譲渡を明確に禁止し、契約上の重要な制限事項として位置付けられ、違反した場合は契約解除の対象となります。

個人墓地の売却について

個人所有の墓地については売却が可能です。ただ、通常の墓じまいの手続き(閉眼供養⇒遺骨取り出し⇒改葬)後土地を更地にし、市区町村宛に墓地廃止許可申請が必要となります。また墓地から農地や住宅地への地目変更の手続きも必要となります。

墓じまいした後の土地返却・墓じまいの具体的手順

では、墓じまいの手順や墓じまいした後の土地返却の具体的な手順について見ていきましょう。まず十分に事前準備(親族との話し合いや行政手続き)した後、実際に墓じまいを行っていきます。

事前準備(3~6か月前から)

親族と墓地管理者の同意を得る

今まで供養や墓参りを共にしてきた親族、また墓地の管理者にも同意を得ます。代々守ってきたお墓を手放すことに嫌悪感を感じる親族や、檀家を手放すことに抵抗感を感じる墓地管理者もいる可能性があります。

じっくり話し合い、お互いに納得してから墓じまいを進めましょう。

改葬先の決定

新たな納骨先を決定します。納骨場所にしても、埋葬方法にしても新たなお墓、納骨堂への埋葬、樹木葬など選択肢は多くあります。

こちらも適切な埋葬方法、埋葬場所を親族と話し合って決めましょう。

行政手続き

墓じまいには下記のような行政書類が必要となります。

  • 改葬許可申請書・・・市区町村役場窓口にて取得または市区町村ホームページにてダウンロードし記入(埋蔵証明書を兼ねる場合も多いようです)
  • 埋蔵証明書・・・現在の墓地管理者から取得
  • 受入許可書・・・改葬先から取得。
  • 改葬承諾書・・・墓主と改葬の申請者が違う場合のみ必要となります。

上記書類を提出し、市区町村へ改葬の申請を行います。

  • 市区町村役場による改葬許可書の発行

1~2週間で改葬許可証が発行されます。改葬許可証がなければ石材店は墓石の解体・撤去作業ができず、遺骨の取り出しもできません。早めに準備し書類を整えておきましょう。

遺骨の移動と墓じまい

遺骨を取り出しと墓石の撤去を次のような流れで行います。

閉眼供養

僧侶に依頼し、親族参列のもと閉眼供養(魂抜きの儀式)を行います。閉眼供養は宗派により不要な場合もありますので菩提寺に確認が必要です。

遺骨の移動

取り出した遺骨を可能な限りきれいにし、骨壺や布袋に収めて新しい納骨先に移動します。

移動方法は

  • 自家用車で移動
  • 公共交通機関で移動
  • ゆうパックで郵送
  • NPOの納骨サービスを利用

などの方法があります。いずれも遺骨が破損しないよう厳重に梱包した上で、慎重な取り扱いが必要です。

墓石の撤去

墓石を解体撤去し、更地にします。更地にするだけではなく追加工事が必要となる場合もあるので管理者に必ず確認しましょう。

墓石の解体撤去作業は石材店に依頼します。2社以上に合い見積もりを取るのが理想ですが、寺院や霊園によっては石材店の指定があるので注意しましょう。

撤去は石材店に任せきりにせず、必ず自分の目で確認しましょう。立ち合いが出来なければ石材店に写真撮影を依頼し必ず確認します。不完全な撤去作業は後々トラブルのもとになります。

土地の返還

墓地管理者による現地確認を受け、必要に応じた追加工事が完了したら、土地の返還完了です。後日のトラブル防止のため、墓じまいに関する一連の書類は大切に保管しておきましょう。

墓じまいにかかる費用

墓じまいにかかる費用は主に下記の通りです。

  • 墓石撤去費用:(目安)30万円~50万円程度
  • 閉眼供養のお布施:(目安)1~5万円程度
  • 離壇料:(目安)5~20万円程度
  • 改葬先費用:(目安)5~200万円程度

金額は宗派や土地によりかなり変動がありますのでそれぞれの項目について確認が必要です。

FAQ

返還後の土地で遺骨が見つかった場合にはどうなりますか?

基本的には完全な撤去を行うべきですが、撤去後に遺骨が見つかった場合元の使用者に連絡が入り、追加の撤去費用を求められる場合もあります。

そうならないよう撤去作業には立ち合いが出来なくても、撤去を依頼した石材店に撤去後の写真撮影を依頼するなど確認作業を慎重に行いましょう。

永代使用権は相続税の対象になりますか?

永代使用権自体は原則として相続税の対象にはなりません。ただ、永代使用料の未払い分がある場合には債務として相続の対象となります。

また、墓石等の構築物は相続財産として評価される場合があります。

個人墓地を所有している場合売却はできますか?

個人墓地も基本的に売却や譲渡はできません。

どうしても売却したい場合は、墓地の廃止許可及び地目の変更が必要となります。市町村役場で墓地の廃止許可申請後 、受理後法務局で「地目変更登記申請」を行う必要があります。

「地目変更登記申請」受理後、売却・譲渡が可能となります。

永代使用料に消費税はかかりますか?

永代使用料に消費税はかかりません。

まとめ

墓じまい後の土地は、以下の理由で必ず管理者に返還する必要があります。

  1. 土地の所有権が墓地管理者にあること
  2. 使用権のみの契約であること
  3. 譲渡禁止特約が付帯していること

墓地返還前に購入時の契約書類を内容をよく確認しておきましょう。

墓じまいの手続きは煩雑で手間も時間もかかることですが、計画的に進めることで円滑な墓じまいが可能となります。親族や関係者に確認しながら時間をかけて確実に進めるようにしましょう。

この記事を書いた人

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