終活は遺される人のためにおこなうものだから、独身である自分には関係ない話だ。そう思っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、独身であっても終活に取り組む意義は十分にあります。もちろん、他人に迷惑をかけないといった人道的な理由ではなく、ちゃんと自分にとってメリットが大きいという話です。
そこで今回は、独身の人が終活に取り組む必要性と、何をしたらいいかについて解説します。独身の終活についてイメージがわかない人は、ぜひ参考にしてください。
独身でも終活が必要な理由
前述した通り、独身であっても終活は必要です。終活とは自分の今後や年老いてからの人生を見直す行為でもあるので、独身であっても非常に有意義なおこないと言えます。
独身の人は、定年後の長い時間を一人で過ごさなければいけません。その中でやりくりしたり、不慮のトラブルに備えたりするためには、終活で人生プランを見直しておくことが必須です。
ここでは、独身の人が終活に取り組む必要性について解説します。いずれも一人で生きるうえで重要な内容なので、必ず覚えておきましょう。
突然のけがや病気に備えられる
独身の人は、突然のけがや病気への対策をしなければいけません。急に動けなくなったり痴ほうになったりしても、周りに助けてくれる人がいないからです。
独身の老後とは、実際のところ常に怪我や病気との戦いです。体が動かなくても頭が働かなくても、自分一人の力で生きていかなければいけません。
元気なうちからかかりつけ医院を決めておいたり、緊急時の連絡先などを把握したりしておけば、万が一の際にも手遅れになりにくいです。終活をしてけがや病気に備えることは、独身にとって生命線とも言えます。
財産の行先を決められる
独身で兄弟もいない場合、自分が亡くなったあとの財産は国庫に納められます。簡単に言うと、国に回収されるというわけです。
死後とはいえ、自分の財産を好き勝手されたくないのであれば、終活を通じて財産の行先を決めておきましょう。遺言状に使い道を記載したり、亡くなったあとの寄付先を指定したりなど、方法はいくらでもあります。
自分が築いてきた財産の行先が不明瞭だと、後々不安になってしまう人も多いです。老後の憂いを絶つためにも、事前に使い道を決めておきましょう。
一人でいることへの不安を払しょくできる
独身が老後を幸せに過ごすためには、一人でいる不安を払しょくすることが必須です。一人で過ごす老後は想像以上に過酷であり、不安になる人も少なくありません。
しかし、あらかじめ終活をして老後の過ごし方や考え方を固めておけば、独身で老後を迎えたとしても不安感は少ないです。また、早めに終活をした結果、終活の結果一人が嫌だと思うなら、老後に備えた友達やパートナーを探す時間も作れます。
一人の老後に対して漠然と不安を持つ人は、いますぐ終活に取り組んでみましょう。終活の中で老後の自分がイメージできるため、一人でいることの不安感が薄れたり、一人でいないための対策を考えたりできます。
独身の人が終活でおこなうべきこと
独身であっても、基本的に終活の内容は変わりません。エンディングノートを書いたり、身辺整理をしたりといった内容は共通します。
ただし、独身だからこそ必要になってくる準備や、早めに備えておくべき内容も少なくありません。ここで紹介する終活の内容とは、そういった独身だからこそ特に必要な内容に絞りました。
一般的な終活と併せて、自分に必要な内容がどれなのかを明確にしておきましょう。具体的な項目は、以下の通りです。
- 葬儀や介護の生前契約
- 老後資産の貯蓄
- 早めの断捨離
- 人間関係の再構築
葬儀や介護の生前契約
独身が葬儀や介護を希望するなら、生前契約をあらかじめ済ませておきましょう。生前契約をしておけば、自分の死後や病気になったときなどに、業者が対応してくれます。
独身の場合、けがや病気になってから葬儀や介護の準備をするのは難しいです。程度によっては、誰かに準備を依頼する間もなく亡くなってしまう可能性も否定できません。
そこで、元気なうちに生前契約をしておくことで、自分が動けなくなったり亡くなったりした際のケアを万全にしておきましょう。葬儀について考える時間もたくさんあるので、冷静に自分の死と向き合えるのも、大きなメリットです。
老後資産の貯蓄
老後は心身とも不便になっていくため、お金で解決する事柄も増えてきます。そのため、独身が老後にどれだけ自由に生きられるかは、老後資産の貯蓄量に左右されると言っても過言ではありません。
終活を通じて老後にかかる費用を計算すれば、何歳までにいくら貯める必要があるのかを把握できます。家族の力を借りられない以上、判明した金額は自分一人で貯蓄しなければいけません。
元気なうちであれば、たくさん働いたり長期投資をしたりなど、資産を増やす方法はいくらでもあります。動けなくなってからお金に悩まされることのないよう、早めに計画を立てることが大切です。
早めの断捨離
独身の終活では、特に断捨離を早めにやっておくことが重要です。理由は単純で、動けなくなってからでは物を捨てられないからです。
断捨離は終活の中でも特に労力がかかり、家族総出で取り組む家庭も少なくありません。しかし、独身の場合は手伝ってくれる家族がいないので、力仕事も自分一人でおこなう必要があります。
私も仕事柄、独身の方の自宅を訪ねる機会が多いですが、玄関まで物が積みあがって足の踏み場もない、という家のほうが割合としては多いです。自分一人で片づけをしなければいけない以上、元気なうちから取り組むことは非常に重要と言えます。
人間関係の再構築
独身だからといって、必ずしも一人とは限りません。一緒に趣味を楽しむ仲間や、たまにご飯を食べる友人などがいれば、独身であってもにぎやかな老後を過ごせます。
若いうちはもちろん、40代、50代であっても趣味ともや価値観の合うパートナーを見つけることは、十分に可能です。例えば私の親戚は、50歳を過ぎてから結婚して、今は二人でまったり老後を過ごしています。
終活をしてみて一人の老後が嫌だとおもうなら、一緒に老後を過ごせる人を探してみましょう。孤独な老後を回避するための行動も、立派な終活です。
年代別に見る、独身で終活に備える内容
一口に終活と言っても、今の年齢によって取り組む内容や考えることは異なります。年齢を重ねてからいきなり準備をするのは大変ですし、だからと言って若いうちからでは具体的な計画も立てられません。
終活は、年齢を重ねるにつれて取り組む内容を変化させていきましょう。具体的な内容を年代別に解説するので、ぜひ参考にしてください。
ちなみに、新しい人間関係の構築に関しては、年齢を問わず行動する価値があります。定年を過ぎてから新しい友人ができた、という人も少なくないので、老後を一人で過ごしたくないのであれば、今日からでも行動するべきです。
30代
30代がおこなうべき終活は、老後資金の貯蓄です。
30代の時点では怪我や病気、死亡といったリスクは低いため、エンディングノートや生前契約に取り組む必要性は低いです。一方で、老後資金は年齢を重ねてからいきなり貯めることが難しいので、若いうちから少しずつ貯めていきましょう。
終活で老後にいくら必要なのかをある程度で良いので把握し、その金額を賄えるように貯蓄を進めるのが一般的です。また、老後まで時間があるため、長期投資で資産を作るのも効果的と言えます。
40代
40代は、30代に引き続き老後資金の貯蓄を進めるとともに、断捨離を進めていきましょう。50代を過ぎると体も思うように動かなくなってくるため、力仕事は40代のうちに済ませておくべきです。
断捨離は最低限必要なものだけを残し、それ以外は処分するくらいの気持ちで臨みましょう。一度整理してしまえば部屋を広く使えますし、年齢を重ねてから物につまづいて怪我をするリスクも減らせます。
また、パスワードやネット口座などのデジタルデータに関しては、40代のうちに整理しておきましょう。年齢を重ねると記憶力も低下するので、覚えているうちに済ませておくべきです。
50代
50代になったら、定年を迎えたうえでの老後プランを考えていきましょう。定年後の健康状態や、資産状況などがある程度具明確にわかる時期になってくるので、具体的な計画も立てやすくなってきます。
葬儀や介護の生前契約についても、50代から調べておくと安心です。いざと言う時に焦らないように、エンディングノートなどに利用する候補や連絡先などを控えておけば、スムーズに利用できます。
50代であれば、計画に変更があった際でもまだ立て直しができます。老後を安心して過ごすためにも、50代の内から今後の過ごし方を考えていきましょう。
独身でも終活をして安心できる老後を迎えよう
独身の人は、老後に頼ったり、助けてくれたりする人がいません。だからこそ、早めに終活をおこない、老後の生活を盤石にしておくことが大切です。
けがや病気で動けなくなってから終活をしようと思っても、一人ではできることが限られてしまいます。自分が元気なうちにできることを済ませておけば、体が動かなくなってきても焦ることはなくなってきます。
今回紹介した内容を参考にして、安心できる老後を迎えられるように、今から準備していきましょう。