墓じまいと改葬は何が違う?混同しやすい意味と具体的な手続きをわかりやすく解説!

この記事を読んでいる皆さんは「墓じまい・改葬(かいそう)手続きを知りたい」「墓じまいと改葬の違いってなんだろう」と思っているものの、具体的な方法がわからず不安ですよね?
お気持ちはよくわかります。墓じまいは一生に何度もあるものではないですし、慣れない手続きが多いですからね。

墓じまい・改葬手続きのポイントは、まずは「自分のお墓をどうするか」を考えることです。
「えっ、自分のお墓のことから考えるの?」と驚いた人もいるでしょう。重要なのは、自分の死後、遺族にどのように供養してほしいか逆算して考えることです。
この記事は、具体的な墓じまい・改葬手続きを知りたい人向けに、どうすれば墓じまいと改葬の手続きをスムーズに進められるか? 墓じまいと改葬の違いは何か? について詳しく解説しました。
具体的な手続きや心構えを知っているかどうかで、トラブルを防ぎ、スムーズに進めていくことができます。
ぜひ最後までお読みください。

目次

墓じまいとは

墓じまいとは、今あるお墓からご遺骨を取り出し、墓石を撤去・解体し、お墓を片付けることです。ご遺骨は、永代供養の合葬墓や散骨などお墓をもたず葬り直します。
墓じまいが増加する背景には、少子高齢化やお墓への価値観の多様化です。「お墓の後継者がいない」「お墓が遠くにあって管理が難しい」などそれぞれ理由が異なります。

改葬とは

改葬とは、今あるお墓からご遺骨を取り出し、別のお墓に葬り直すことです。お墓の引っ越しとイメージすると、わかりやすいでしょう。
厚生労働省の衛生行政報告例によると、毎年改葬件数が増加しています。

年度全国の改葬件数
令和元年124,346
令和2年117,772
令和3年118,975
令和4年151,706
令和5年166,886

出典:e-Sta 政府統計の総合窓口

墓じまいと改葬は意味が違う

墓じまいと改葬の意味は供養方法で異なります。表で確認してみましょう。

用語墓じまい後の供養方法
墓じまい合葬式のお墓、散骨、手元供養
改葬承継式のお墓、個別供養のお墓

墓じまいでは、取り出したご遺骨を納骨を合葬式の永代供養墓に移します。つまり、お墓自体がなくなります。
一方、改葬は、ご遺骨を承継式のお墓や一定期間個別に供養されるお墓に引っ越しさせます。
取り出したご遺骨をどのように供養するかによって意味が違うのです。
改葬の前に、墓じまいがあると覚えておくと、墓じまいと改葬の意味が混同することはないでしょう。

自分のお墓のことから考える

墓じまいするか改葬するか悩む前に、自分のお墓のことまで考えて結論を出すことが重要です。今、あなたが墓じまいするか改葬するか悩んでいる姿は、将来の子どもや孫の姿になるかもしれません。そうはなってほしくないですよね。その悩みを断ち切るためにも、以下の2つのポイントにフォーカスして、自分のお墓について考えてみましょう。

誰と一緒にお墓に入りたい?

誰と一緒にいたいかは、生前も死後もとても大切なことです。自分の心が穏やかでいられる選択をしましょう。
ご先祖や親、配偶者、ひとりが気楽、そもそもお墓は必要ないなど、それぞれの思い描く形は違うのではないでしょうか。

どんなふうに供養してほしい?

自分の死後、遺族にどんな供養をしてほしいか考えてみましょう。お墓参りにはなるべく来てほしい、家族のそばに遺骨を置いてほしい、たまに思い出してもらえればいいなど、供養の形も千差万別です。

墓じまいするか改葬するか 

墓じまいするか改葬するかの2択で迷っている場合、まずは自分の現状を整理しましょう。そして、大切なのは自分はどうしたいのかという気持ちです。気持ちを整理するポイントは以下のとおりです。

気持ちを整理するときの判断基準
  • お墓の後継者がいる。または、継いでくれそうな人がいる
  • お墓を片付けたい
  • 新しいお墓を建てて、今あるお墓から引っ越ししたい
  • 自分の死後にお墓を片付けてほしい
自分のお墓について2つの軸で考える
  • 誰と一緒にお墓に入りたいか
  • 自分の死後、どんな供養をしてほしいか

墓じまいの手続き

ここでは墓じまい後の供養方法は、散骨、手元供養にする場合の説明をします。

墓じまいの手続き(散骨、手元供養する場合)
  1. 家族や親族に墓じまいをしたい旨を相談する
  2. 今あるお墓の管理者に相談する
  3. 石材業者を決める
  4. 必要書類を自治体の窓口やホームページで確認する
  5. 改葬許可書を準備する
  6. ご遺骨を取り出す
  7. 墓石を撤去する
  8. 取り出したご遺骨を散骨または手元供養する 

1.家族や親族に墓じまいをしたい旨を相談する

墓じまいを検討したら、必ず家族や親族に相談することが重要です。お墓の価値観は世代によって異なります。相手の意見を受け止めつつ、なぜ墓じまいを考えているか落ち着いて説明できるとよいですね。墓じまいを一人で進めてしまうと、後のトラブルにつながるので要注意です。
焦らず、みんなが納得できる墓じまいを検討していきましょう。

2.今あるお墓の管理者に相談する

今あるお墓の管理者にも事前に相談しましょう。その際の注意点は、「墓じまいをします」と断定的に伝えるのではなく、あくまでも墓じまいを検討している姿勢で相談することです。管理者側の立場に立ってみると、いきなり墓じまいしますと言われたら戸惑ってしまうかもしれません。
墓じまいを検討するに至った経緯をていねいに伝えることで、管理者の理解も得やすいでしょう。

今あるお墓の管理者はどこ?

管理者に相談する前に誰がお墓を管理しているのか、確認しておきましょう

区分管理者宗教の制限
寺院墓地お寺原則、檀家になる必要がある
公営墓地都道府県や市町村宗教は自由
民営墓地公益法人、宗教法人宗教を問われないことが多い

3.石材業者を決める

お墓を解体・撤去する石材業者を選定します。業者によって費用が変わるので、相見積もりを依頼します。複数社を比較検討し、予算に合った石材業者と契約しましょう。

4.必要書類を自治体の窓口やホームページで確認する

必要書類は各自治体によって異なります。今あるお墓の自治体のホームページや電話で問い合わせるなど確認しておきましょう。検索する際は「改葬」とキーワード検索すると該当ページにたどり着きやすいです。実際に、複数の自治体のホームページで「墓じまい」と検索してみましたが、なかなかヒットしませんでした。しかし、改葬でも見つからない場合は、戸籍や届出のページを確認してみましょう。
なお、散骨する場合は自治体によって対応が異なります。条例で散骨が禁止されている場合もあるので、電話で問い合わせると安心して手続きを進められます。

5.改葬許可申請の手続きをする

具体的な流れは以下の通りです。
なお、今あるお墓の管理者が記入する欄があるので、記入漏れがないよう注意が必要です。

  1. 手続きの前にもう一度納骨先を確認
  2. 改葬許可申請書を入手 ※遺骨1体につき、改葬許可申請書が1通必要
  3. 改葬許可申請書を記入 ※墓地使用者本人が申請できない場合は、各自治体の担当課に相談
  4. 改葬許可申請書を提出
  5. 改葬許可証を受け取る

出典:東京都北区

6.ご遺骨を取り出す

ご遺骨を取り出す前に、魂抜き(閉眼供養)を行います。魂抜きとは、読経をあげ魂をお墓から抜く儀式のことです。閉眼供養(へいげんくよう)とも呼ばれています。

7.墓石を撤去する

石材業者が墓石を解体・撤去します。墓地を更地に戻したら、墓じまいの完了です。更地になった墓地が原状回復されているか確認しましょう。不備がないよう管理者に返還することがトラブルを防ぎます。直接現場を見ることが難しい場合は、更地になった墓地を画像データを送ってもらえるか、相談してみるとよいですね。

8.取り出したご遺骨を散骨または手元供養する

散骨する場合と手元供養する場合のそれぞれの手順は以下の通りです。

散骨の場合
  1. 取り出したご遺骨を散骨業者に受け渡す
  2. 遺骨を粉骨する(2㎜以下の大きさ)
  3. 散骨する ※散骨方法は2つあります。・自らの手で遺骨をまく ・業者にすべて委託する
手元供養の場合
  1. 取り出したご遺骨を手元供養業者に受け渡す
  2. 遺骨を粉骨する
  3. 自宅に安置するかアクセサリーなどに加工して身につける

改葬手続き

墓じまいとほぼ同じ流れで手続きをします。具体的な改葬手続きの流れは以下の通りです。

1.取り出しご遺骨の新しい移転先を決める

お墓の引っ越し先を決める必要があります。家族や親族と相談しながら、場所やアクセスのよさなど考慮し進めていきましょう。

2.受入証明書と利用許可書を受け取る

新しい移転先の管理者から「受入証明書」「利用許可書」を受け取ります

3. 改葬許可申請書を準備する

今あるお墓の役所から「改葬許可申請書」をもらい記入します。今あるお墓の管理者の署名捺印をもらいます。

4.改葬許可申請書に必要書類を添付し役所に提出する

改葬許可申請書に添付する必要書類は以下のとおりです。

改葬許可申請書に添付する書類
  • 受入証明書
  • 利用許可書
  • 埋葬証明書

※提出する前に再度記入漏れがないか確認するとよいでしょう

5.改葬許可証の交付を受ける

申請書に記入漏れや不備がければ、無事改葬許可証が発行されます。

6.ご遺骨を引き取る

今あるお墓の閉眼供養を行い、ご遺骨を取り出します。お墓を更地にして返します。

7.新しいお墓の管理者に、改葬許可証を提出する

新しいお墓の管理者に改葬許可書を提出します。

8.新しいお墓で開眼供養と納骨式の法要

改葬許可書を提出したら、新しいお墓で開眼供養と納骨式をの法要を行います

改葬手続きの費用はいくらかかる?

改葬にかかる費用は以下の3つの区分に分けられます。一般的には、100万~300万円かかるとされています。

区分内容費用
今あるお墓ご遺骨の取り出し1万~3万円(1体)
お墓の撤去・解体10万~15万円(1㎡)
石碑や骨壺の運搬費数万~数十万円
新たなお墓お墓の建立10万~数百万
その他今あるお墓でのお布施3万円~
新たなお墓でのお布施3万円~
新たなお墓での納骨作業数万円~
改葬の手続き数百円~2千円

改葬の納骨先

取り出したご遺骨の新しいお墓の区分は2つに分けられます。継承式のお墓か永代供養式のお墓です。お墓の種類は以下のとおりです。

2つの区分から見るお墓の種類

・継承式のお墓(継ぐ人がいる)

  1. 家墓(家族・親族のご遺骨を共同で納める)・・・お墓の代表ともいえる「○○家之墓」と刻まれたお墓
  2. 両家墓・・・2つの家のお墓を1つにする。ただし、宗派が違うと1つにすることが難しい。

永代供養式のお墓(継ぐ人がいない)

  1. 単独墓・・・一定期間は個別で供養される
  2. 合葬墓・・・他の人のご遺骨と一緒に納骨される
  3. 集合墓・・・単独墓より小さなスペースに個別で埋葬される
  4. 納骨堂・・・室内で安置する
  5. 樹木葬・・・シンボルツリーの下に埋葬する

まとめ|後悔しないために自分の気持ちと向き合おう

今回は墓じまいと改葬の意味や、具体的な手続きなどを解説しました。まずは、自分のお墓のことを考えてから墓じまいするか改葬するかを決めると、後悔が少ないでしょう。
自分の考えがまとまったら、必ず家族や親族に相談することが大切です。墓じまい、改葬する理由をていねいに説明し、了承を得てから手続きを進めましょう。
墓じまいや改葬を検討したら、やることが多く精神的な負担になってしまかもしれません。しかし、今回解説したポイントに気をつければ、お墓問題をすっきり解消できます。

この記事を書いた人

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