お墓のお供え物は、五供(ごく)という仏教からの意味を持ちます。また、お供えする時には正しい置き方があります。故人への敬意も込めてお供えするので、全て正しい方法にこだわる必要はありませんが、お供え物の意味を理解しておいて損はありません。
本記事では、お供え物の意味、そして正しい置き方について解説します。故人への挨拶を形式に沿って行いたい方は、ぜひ参考にしてください。
お墓のお供え物の基本は「五供(ごく)」
お墓のお供え物は、五供(ごく)という仏教を基本に用意します。五供は香・花・灯燭・浄水・飲食からなります。
香
「香」はお線香のことを指し、香りは故人への上等な食べ物とされています。故人にとっては香りが食べ物になるので、故人の好きな匂いのお線香が良いです。お線香には、お清めや自分への浄化作用の意味もあります。そのため、故人へのお供えが自身のためにもあることを考えると良いです。
お墓参りでは、束になったお線香をお供えするイメージがあります。束になっていても数本ずつのお供えでもどちらでも問題ありません。ただし、地域によっては習慣があるので、迷った時は周辺のお墓がどのように供えているか確認すると良いでしょう。また、仏壇にお供えする場合は、部屋に煙がこもらない物を選びましょう。
花
五供(ごく)の花は、献花を指します。故人が好きな花でお墓を彩ると良いです。また、新鮮な花が望ましいです。お墓にお供えした時、シャンとしたイメージの方が見栄えも良くなります。
お墓にお供えする場合、棘や毒を有する花は殺生を連想させるため避けるべき花です。どうしても故人が好きだったなどの理由で供えたい場合は、棘を取り除きます。花粉がついている花は周囲のお墓にも迷惑がかかるのでタブーとされています。花粉がついている花は避けるか、おすべ部分を切るようにしてください。花びらが散りやすい花も周囲への配慮を考えて避けるべき花なので気をつけましょう。
お墓は明るい花で故人への感謝の気持ちを伝えたいと考えますが、実は亡くなってまもない場合は華やかな花は避けます。タイミングは一周忌前後です。葬儀に使用する不祝儀袋の前書きは薄墨の筆を使用します。亡くなってすぐに明るいイメージを避けるためのマナーです。同様にお墓のお花も一周忌を迎えるまでは鮮やかさをなくします。
どんな花が良いか迷いますが、淡い紫や青、ピンク、黄色などを基調にすると良いです。あまりにも暗い花はどんよりした気持ちになるので使用できる色で故人へお花を供えましょう。
灯燭
五供(ごく)の「灯燭」はロウソクの灯りのことを指し、故人へ会いに来たことを知らせる意味を持ちます。故人は、光を感じとることができるとされています。そのため、お墓参りのロウソクの灯りは大きな意味を持ちます。
しかし、近年お墓参りでロウソクに火を灯さない家庭も増えています。花や故人の好きだった食べ物が主流となり、ロウソクの灯りを灯さずにお参りを終えることも多いです。故人との繋がりを感じられるロウソクですので、お墓参りには必ず持参しましょう。お参りを終えたら、家事の原因にもなるので火は必ず消します。消炎した後の、独特のロウソクの匂いもまたお墓参りならではです。
浄水
五供(ごく)の「浄水」は、お墓にお供えをするための水を指します。文字通り、清らかな水を用意します。お墓の水鉢にお供えしますが、お参りに来た人の気持ちも清められるので意味を理解しておくと良いです。
綺麗な水を入れ替えた水鉢にはご先祖さまが映し出されるなんて言われています。気持ち穏やかに故人を想う時間を過ごすと、大好きだったあの人が姿を見せてくれるかもしれません。
飲食
五供(ごく)の「飲食」は、食べ物や飲み物を指します。故人の好きだった食べ物や飲み物を用意します。ただし、好きな物ならなんでも良いわけではありません。お供え物として適さない物があるので注意が必要です。
お墓のお供え物の正しい置き方
お墓にお供え物をする時は、正しい置き方があります。故人を想ってのお参りなので気にしないという方もいますが、周囲からマナーがないと思われることもあるので、正しい置き方について理解しておくと良いです。
お供え物は直に置かない
お墓へのお供え物は直置きはNGです。見た目の問題もありますが、故人へ敬意がないと感じさせます。お墓にお供え物をする場合は、お盆や台を使用します。手軽に用意できるハンカチやタオルも代用できます。直置きすることでお墓を傷つけることもあるので用意できる物を持参しましょう。
お線香は香炉にお供えする
お線香は香炉へお供えします。お墓によってお線香のお供え場所は異なります。
- 横向きの香炉|線香の火がついている方が左側になるように寝かせてお供えする
- 縦向きの香炉|そのまま香炉へ立てるようにしてお供えする
石材でできたお椀状の香炉が縦向き、ステンレス製の長い皿が横向きと覚えておくと良いです。お線香の火の付け方は宗派によって異なります。束の状態で火をつける場合と、決まった本数で火をつける場合があります。
ロウソクやマッチを使って、お線香に火をつけるのが基本です。お線香に火がついたことが確認できたら、手であおいで火を消します。フッと息を吹きかけたくなりますが、お線香の火を息で消すのはNGです。手であおぐか、軽くお線香を上下に振って火を消します。火が消えたことが確認できたら、香炉に供えて手を合わせます。
お墓のお供え物におすすめのもの
お墓へのお供え物におすすめは、以下です。
- 故人の好きだったもの
- 季節にあった食べ物
- 日持ちするもの
お供え物は親族の納得のいくもので良いのですが、何が良いかわからない場合は、おすすめのものを参考にすると良いです。
故人の好きだったもの
お墓参りに持参するお供え物は、基本的に故人の好きだった物を用意します。生前、故人が好んでいたものでお墓を飾ると良いです。親族であれば、何が好きだったか把握できると思いますが、近くで過ごしていなかった場合など、好きなものが分からない場合は親族に尋ねると良いです。
季節にあった食べ物
お供え物は季節にあったものも良いとされます。とくに果物は季節を連想させるのでおすすめです。夏はぶどうや桃、秋はみかんや梨が良いでしょう。冬から春はイチゴが季節を連想させます。
通年、手に入りやすいりんごは果物で迷った時におすすめです。丸い形の果物は「縁」と考えられます。故人との縁を大事にする意味でも、果物選びに迷ったら丸いりんごを用意すると良いです。
日持ちするもの
お墓のお供え物は、できれば日持ちのするものを選びます。理由は、お供え物は持ち帰るのがマナーだからです。お供え物は食べてはいけないイメージが強いですが、実は「仏様のお下がり」としていただくことができます。そのため、日持ちしないお供え物は食べることができずに処分しなくてはいけません。
お供え物を無駄にしないためにも、日持ちするもの、また個包装になっているものを選びましょう。
お墓のお供え物として避けるべきもの
お墓のお供え物で、以下は避けます。
- 殺生をイメージさせるもの
- 五辛に分類される食べ物
お墓参りでマイナスのイメージを持たれないためにも、お供え物のマナーですので理解しておくと良いです。
殺生をイメージさせるもの
お墓へのお供え物として「殺生をイメージさせるもの」は避けます。例えば、魚や肉、ソーセージやハムといった加工品です。故人が生前お肉好きだったとしても、お寿司好きだったとしてもお供え物としては避けます。
また、お供え物としておすすめの果物も熟して腐りかけたものは避けます。腐りかけの食べ物は腐敗が進み、異臭をもたらします。死臭を連想させるのでお供え物として避けるべき食べ物です。
五辛に分類される食べ物
お墓へのお供え物で五辛(ごしん)と呼ばれる香味のあるものは避けます。理由は、仏教において「五辛は煩悩を刺激するため食べるべきではない」と考えられるからです。五辛に分類されるものは、にんにくやねぎ、らっきょう、になどです。いずれも香りも強く、周囲に迷惑もかかるので五辛(ごしん)に分類される食べ物は避けましょう。
お墓のお供えものによくある質問
お墓のお供え物に関するよくある質問に回答します。
「お供え物は持ち帰るの?」「お酒やタバコはお供えできる?」「墓石にお酒やジュースをかけても良いの?」
意外と知らない、お供え物の基本を理解しておきましょう。
お墓のお供え物は持ち帰る?
お墓のお供え物は、その日に持ち帰ります。とは言え、お供え物は親族が来た印にもなっているようにそのままお墓に供えている家庭もあります。昔はお供え物はそのまま供えていることが良しとされていたからです。
しかし、お供え物を置いておくとカラスの被害にあったり、周囲への影響から現在は、お供え物は当日中に持ち帰るのがマナーとなっています。
お供え物は食べても良い?
お供え物は「仏様からのお下がり」とされており、食べてよいです。一見、マナー違反に感じる行為ですが食べ物を無駄にしないためにも食べて問題ありません。ただし、お墓にお供えした物を仏壇に再度備えるのは失礼にあたるので仏壇へのお供えは新しく用意しましょう。
お酒やタバコはお供えできる?
お酒やタバコはお供えできます。ただし、周囲への配慮が必要です。お酒は開封すると臭いが気になる方もいます。タバコも同様に臭いを煙たがる方もいます。お酒は開封せず、お供えする分には問題ありません。タバコも火をつけずにお供えしましょう。
墓石にお酒やジュースをかけても良い?
お墓にお酒やジュースをかけるシーンを見たことがある方もいるかもしれませんが、お墓の影響を考えるとNGです。お酒好きだった故人のためと想う気持ちは分かりますが、サビや変色の原因になります。お墓を綺麗に保つためにもお酒やジュースは器に注ぐようにしましょう。お酒はお参りが終わったら、回収して周囲へ迷惑をかけないように配慮しましょう。
お墓参りにおすすめのお供え物と正しい置き方を理解しておこう
お墓参りのお供え物は仏教の五供(ごく)を基本に用意します。
- 香|お線香で故人への上等な食べ物
- 花|故人が好きな花
- 灯燭|ロウソクの灯
- 浄水|清らかな水
- 飲食|故人の好きな食べ物や飲み物
無理に揃える必要はありませんが、故人を近くに感じられるお墓参りの貴重な時間を気持ちよく過ごすためにも参考にしてください。