お墓のろうそく立ては、線香に火をつけるだけのものではありません。ろうそくの火は場を清める意味を持つので、お墓参りには必ず持参します。近年、マッチやライターで火を線香に火をつける方も増えていますが、お墓参りは故人と過ごす清らかな時間です。
お墓によってはろうそく立てがもともと設置されるケースも多いです。なぜ、ろうそく立てが必須なのか意味を理解して、お墓参りの際はろうそく立てを正しく使用しましょう。
お墓にろうそくをお供えする意味
お墓のろうそく立ては絶対に必要というわけではありません。近年、お墓参りにライターやマッチを持参する姿も多く見かけます。しかし、従来の多くのお墓にはろうそく立てが設置されています。これは、仏教において火は神聖なものという考えから線香に火をつける際はろうそくを使用しているからです。そこで必要になるのがろうそく立てです。
もちろん、ろうそく立てが設置されていないお墓もあります。そのため、持参しないといけないケースもありますがお墓参りを仏教の教えに習って行うためには、ろうそく立ては必須と考えておくと良いです。
ろうそくに火を灯す意味
お墓に火を灯すのは線香だけではありません。線香に火をつけるために使用するろうそくの火は神聖なものと考えられています。お墓でろうそく立てを使用したい理由は他にもあります。
- 周囲の邪気を払い場を清める効果がある
- 幸運を呼ぶ効果がある
- 故人が迷いなく安らかに眠れる場所に帰ることができる
- 故人への挨拶を意味する
ろうそくの火には邪気や災いを遠ざける効果があると言われます。そして、幸運を呼び寄せる力が高まると考えられているのです。
また、ろうそくの火は故人への道しるべとも考えられています。お盆には「迎え盆」「送り盆」があります。迎え盆はお墓から個人を仏壇のある家に迎える日です。中日(なかび)は故人とゆっくり過ごす日で、送り盆は故人をろうそくの火で清めたお墓に帰す日です。
仏教において、お盆は故人を迎え入れる日とされておりろうそくの灯りは故人が迷わないように道しるべの役割を持つと言われます。地域によってはお墓から提灯に火をつけて仏壇に迎え入れる場所もあるでしょう。まさに、提灯の火が故人へ「帰るお家はここだよ」の役割になっているのです。
そして、ろうそくの火は故人との絆を深める意味も持ちます。故人はろうそくの火を感じることができると言われています。そのため、お墓参りでろうそくに火をつけることは、故人に「会いに来たよ」の合図にもなるのです。
お墓参りで使用するろうそく立ての種類
お墓参りで使用するろうそく立てには種類があります。ろうそく立てがないお墓には持ち運び可能なろうそく立てもあるので、この機会に用意してはいかがでしょう。
携帯性に優れる据置型
据置型のろうそく立ては置くだけで使えます。携帯性に優れており、お墓にろうそく立てがない場合、手軽に持参できるのでおすすめです。もし、ろうそくの量が多い場合は追加で用意すると良いでしょう。
主流になる扉付き
近年主流になっているのが、扉付きのろうそく立てです。扉付きなので風を遮ることができます。また、扉はガラス製のものが多くろうそくがはっきり見えるのも扉付きろうそく立ての特徴になります。
ガラス製のろうそく立ては石などの落下で割れることがあります。割れやすい点はデメリットになりますが、破損した時は修理もできるので使いやすさを求める方におすすめのろうそく立てになります。
風を防ぐステンレス製ガラス窓タイプ
扉付きのろうそく立てが主流になる現代、次に人気を集めるのがステンレス製ガラス窓タイプのろうそく立てです。ガラス窓で風を防ぐことができるので風の影響を受けない特徴があります。
ガラスが割れた場合、交換もしくは修理が可能です。スタイリッシュさをイメージさせるので、お墓のイメージに合わせて選ぶと良いです。
石で作られた石網目回転タイプ
石網目回転タイプのろうそく立ては、正面が網目状になっています。石で作られているのでお墓にしっくりくるのが特徴です。石網目回転タイプのろうそく立ては、胴体を回すと網目部分が開きます。正面から火をつけて灯すスタイルです。
お墓のイメージを邪魔しないタイプですが、ガラス製のろうそく立てと比較すると正面部分が隠れやすく、火が見えにくい点がデメリットです。
手軽に設置できるステンレス製簡易型
ステンレス製簡易型のろうそく立ては、お墓の空いたスペースに手軽に設置できます。お墓の作りは各々異なります。ろうそく立てがないお墓には、ろうそく立てを設置できるスペースに迷うこともあるでしょう。そんなときは、ネジ止めで固定できるステンレス製簡易型のろうそく立てがおすすめです。
ろうそく立ての正しいお手入れ方法
お墓のろうそく立ては「ろう」が付くため、固まると取りにくいです。そのため、定期的にお手入れが必要になります。お手入れの仕方を間違うとろうそく立てを壊すこともあるので注意です。
ろうが付いた場合は、60度前後のお湯で取り除きます。お湯を使用するので、ろうそく立てをお手入れする場合はゴム手袋を使用します。お湯でろうが溶け始めたら無理矢理取るのではなく、柔らかく溶け始めるタイミングで洗い流しましょう。
ろうそく立ての洗う頻度は、汚れ方次第です。何度も洗うのはろうそく立てを傷つける原因になります。頻繁に洗う必要はないので、状態を保てるタイミングでお手入れしましょう。
お墓にろうそくを立てるときの3つのマナー
お墓にろうそくを立てる際、守るべき3つのマナーがあります。
- ろうそくは必ず灯す
- ろうそくの火を息で吹き消さない
- ろうそくは消して必ず持ち帰る
当たり前かもしれませんが、ろうそくを使用する際のマナーです。お墓参り前に再度確認しておきましょう。
お墓参りでろうそくの火は必ず灯します。周囲の浄化、ご先祖さまへの挨拶の意味を持ちます。線香に火をつけるためだけでないので、必ずろうそくに火を灯しましょう。
ろうそくの火は手で仰いで消します。息で吹き消した方が簡単ですが、ご法度です。ろうそくは使用後、軽く手で仰ぎ、その風で消します。また、ろうそくへ必ず持ち帰ります。火を消しても、火事の原因になります。放置することで風で吹き飛んだり、二次災害が考えられます。ろうそくの火を消したら、必ず持ち帰ります。
ろうそく以外のお墓参りに必要なお供え物
お墓参りにはろうそくを合わせた五供のお供え物を用意します。あまり耳慣れないかもしれませんが、五供は「香」「花」「灯燭(とうしょく)」「浄水」「飲食(おんじき)」を指します。
ろうそく以外に、故人が好む香りのお線香、故人が生前好きだったお花、水鉢に入れる綺麗な水、そして故人の好きな飲み物や食べ物を用意しましょう。
地域によっては風習はあると思いますが、用意する花は棘のあるものや花粉の多い花は避けます。また、食べ物は殺生をイメージさせるもの、にんにくやニラなど五辛に分類されるものは縁起的に良くないので避けましょう。
お墓参りの基本の作法
お墓参りは、日本の古き良き儀式です。作法を身につけておくのも故人への敬意の表れになります。お墓参りに身につけておきたい基本の作法を解説します。
- 手を洗い清める
- 手桶に水に汲む
- お墓の前で一礼する
- 必要な範囲でお墓の掃除をする
- 線香を灯す
- お供え物を備える
- 合掌する
マナーに沿った作法は上記になります。もちろん、作法より気持ちが大事です。故人に会いにお墓を訪れることが大事ですが、作法があることは理解しておくと良いです。
手を清める際、墓地にある水道を使用すると良いです。お墓にかけるための水も水道の使用が許可されていれば、手桶もしくはバケツに汲みます。大量の水を使用するのはマナー的に良くないので、必要な量にとどめましょう。
お墓の前に来たら、必ず一礼します。そして、お墓周辺の掃除を行います。掃除をスムーズに行うために、 スポンジやたわしの用意が必要です。たわしを使用する際は、墓石を傷つけないように気をつけましょう。
お墓周辺の必要範囲を綺麗にしたら、ろうそくを灯し線香に火をつけます。改めて、会いに来たことを故人に知らせましょう。水鉢に綺麗な水を入れて、故人の好きなお花を供えます。そして、故人が好きな飲み物や食べ物を並べます。
お参りが終わったら、お供え物を持ち帰ります。食べ物や飲み物は仏様からのお下がりですので、食べても問題ありません。線香の火は必ず消し、ろうそくも持ち帰ります。以上が、お墓参りの作法です。
お墓のろうそく立てによくある質問
お墓のろうそく立てによくある質問に回答します。
お墓のろうそく立てを交換したいときはどうしたら良い?
ろうそく立ての種類があります。特徴が異なるので種類によっては交換、修理が可能です。破損した場合、交換できる場合は交換します。修理は石材店に依頼すると良いです。修理、交換ができない場合は買い替えが必要になるでしょう。ろうそく立ては「ろう」の影響からも劣化します。できるだけ長持ちさせるためにも、定期的にお手入れしましょう。
ろうそくを立てないといけない?
必ずしも立てないといけないわけではありません。近年、ろうそく立てを使用しない家庭も増えています。ですが、ろうそくを立てる意味を理解すると、ろうそく立ての必要性も分かるのではないでしょうか。ろうそくの産地でもある滋賀県や京都府、愛知県や福井県、石川県は今でもろうそく立てが多く使われています。絶対に必要というわけではありませんが、故人をより身近に感じられるろうそくに火を灯してみてはいかがでしょう。
お墓参りはろうそく立てに火を灯そう
お墓参りは、個人をより身近に感じることができる日本古来の儀式です。形式は地域により異なりますが、五供を用意すると良いとされます。
灯燭(とうしょく)は、ろうそくを指します。ろうそくに火を灯すと浄化効果があり、幸運を招くと考えられています。そんなろうそくは、ライターやマッチで代用されるようになりました。個人を想い、ろうそく立てを活用してお参りしてみてはいかがでしょう。