お墓づくりのデザイン完全ガイド！3種類の墓石の基礎知識と費用相場について解説

「お墓を建てたいけど、形や大きさ、費用のことなど、いろいろ悩んでしまって…」
「デザインの種類がたくさんあって、どれを選んだらいいのかわからない」
このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

お墓や墓石の選びは、デザインの選択肢が多岐にわたる上、宗教や地域性によっても、適切な墓石の形状や装飾が異なります。

本記事では、墓石の種類とそれぞれの特徴、宗教別のデザインの違い、さらにデザイン墓石の費用や意匠権などについて、わかりやすく解説していきます。
ご家族の大切な想い出の場となるお墓選びの参考にしてください。

お墓のデザインは伝統的な和型墓石から現代的なデザイン墓石まで3種類

お墓や墓石のデザインは、和型墓石・洋型墓石・デザイン墓石という3つの種類に大別されます。

墓石の起源をたどると、お釈迦様の埋葬地に建立された「卒塔婆（ストゥーパ）」にまでさかのぼります。
墓石は、江戸時代に角柱タイプが登場するまでは、石造りの供養塔としての意味を有していたため、層塔のようなスタイルが主流となっていました。
現代でよく見かける和型の角柱墓石は、位牌や板碑がもとになったと考えられています。

第二次世界大戦後になると、新たな墓石スタイルが生まれ、東日本地域では横長のデザインが特徴的な洋型墓石が人気を集めるようになりました。
近年では、従来の形式にとらわれることなく、故人やご遺族の想いを形にしたオリジナルデザインの墓石も増加傾向にあります。

墓石の形状や規模について、特別な制約は設けられていません。
ただし、以下の2点には留意が必要です。

• 霊園や墓地の区画サイズに適合する大きさであること
• 設置する霊園や墓地の規定に沿ったデザインであること

和型墓石の特徴とデザインとは

和型墓石は、縦長のシルエットが特徴的な日本の伝統的な墓石デザインであり、最も親しまれている墓石です。
仏舎利塔という仏教建造物を起源とし、江戸時代中期から広く普及してきました。
安定感のある見た目と長年継承されてきた伝統から、幅広い年代から支持を得ています。

前述のとおり、墓石のデザインの原点は、お釈迦様の遺骨を祀った卒塔婆という仏教建築物です。
日本の墓石は特に、層塔形式の卒塔婆から影響を受けた形状を採用してきました。

しかし、近年の傾向として、以下のような変化が見られます。

• 好みを反映した墓石デザインの多様化
• 伝統的なデザインへのモダンな要素の取り入れ

墓石の色を選ぶ際に好まれているのは、清潔な印象を与える白系統、重厚感を演出する黒系統、落ち着いた雰囲気を表現するグレー系統です。

和型墓石の基本的な構造

参考：三郷石材｜墓石の種類とデザイン 和型墓石

一般的な和型墓石は、3段もしくは4段の構造で構成されています。
4段構造の場合、最上部から「棹石（さおいし）」「上台石」「中台石」「芝石」という配置です。
それぞれが独自の意味を持ち、棹石は家庭円満を表す「天」、上台石は人望や出世を表す「人」、中台石は財産維持を表す「地」を象徴しています。

棹石のサイズは横幅で区分され、八寸角（24cm）、九寸角（27cm）、尺角（30cm）などの規格があります。

和型墓石の一般的な設備は、お線香を立てるための香炉、花を供えるための花立、お水を入れておく水鉢、墓石前方に設置される拝石などです。
納骨棺が地下にある墓石では、拝石の下部に納骨棺への入口が設けられています。

墓石への刻字には2つの種類があり、一つは「〇〇家之墓」という家名の刻印、もう一つは宗派に応じた文字の刻印です。
宗派特有の刻字としては、「南無阿弥陀佛」「倶会一処」「南無妙法蓮華経」、あるいは仏様や菩薩を表現した梵字などが施されます。

神道式墓石の特徴とデザイン

参考：墓石の石安｜神道のお墓を建てるには。お墓の形や彫刻文字について

神道式の墓石は、基本構造こそ仏式の和型墓石と共通していますが、独特の装飾や作法を持つ独自のデザインを確立しています。
それは、仏式とは異なり香炉は設置されず、代わりに玉串を供えるための八足台が必要となることです。

細長い角柱型の竿石には、特徴的な四角錘状の「兜巾」加工が施されることが多く、修験者の黒色頭巾や三種の神器の一つである天叢雲剣をかたどったと言われています。

神道式墓石の刻字は、「◯◯家之奥都城」もしくは「◯◯家之奥津城」と刻まれるのが一般的です。
「都」や「津」には万葉仮名で、「〜の」という意味があり、都は神官や氏子向け、津は一般信徒向けとして使われます。
また、戒名ではなく霊名が使われ、姓名に「之霊」「命」「命霊」「霊位」を付記します。

神社は通常、墓地を所有していないため、神道式の墓石を建立する際は、公営または民営の霊園から墓地区画の購入が必要です。

洋型墓石の特徴とデザイン

洋型墓石の特徴は横長で低めの高さです。
コンパクトな区画でも建立が可能で、低い重心により耐震性に優れています。
外柵工事や土盛りが不要なタイプも多く、和型墓石と比較してコストを抑えられる点も特徴です。

キリスト教式の墓石から発展した洋型墓石は、現代では宗教や宗派を問わず使用可能です。
モダンな外観と親しみやすい形状により、特に首都圏や東日本地域で支持を集めています。また、ガーデニング霊園や芝生式の墓地の増加に伴い、急速に普及が進んでいます。

墓石の色彩バリエーションは豊富で、従来の白系・グレー系・黒系に加え、赤系やピンク系、紺色、緑系、茶色など、デザインコンセプトに応じて多彩な石材から選択が可能です。

洋型墓石の基本的な構造

参考：三郷石材｜墓石の種類とデザイン 洋型墓石

洋型墓石は「ストレート型」「オルガン型」「プレート型」という3つの基本形式があります。
棹石が垂直に立つストレート型、斜めに傾斜したオルガン型、地面に直接設置するプレート型と、それぞれ異なる特徴を持ちます。

台石は1段式または2段式で構成され、和型墓石同様、一般的な設備として香炉、花立、水鉢などが備えられています。

多様な石材との相性が良く、デザインの自由度が高いのが特徴的です。

近年の墓石刻字には、以下のような新しい傾向が見られます。

• 従来の「○○家」という家名表記に加え、「愛」「絆」「ありがとう」「感謝」などの心情を表す言葉
• 故人が大切にしていた格言や詩の一節
• オリジナルのイラストやレリーフデザイン

このように自由な表現が可能な点も、洋型墓石の魅力です。
個性的な刻字やデザインを望む方々にとって、理想的な選択肢の一つとなっています。

キリスト教式の墓石の特徴とデザイン

キリスト教式の墓石は、明治初期の外国人墓地を起源とし、十字架を特徴とする独自のデザインが有名です。
現代では、カトリック教会は各教会に、プロテスタントは日本キリスト教団の地区別に墓地を有しています。

キリスト教式の墓石は自由度の高いデザインに特徴があり、以下のような様式があります。

• 敷石上に十字架を配置したタイプ
• 傾斜面を持つオルガン型
• 前面が垂直な平型

和型墓石とは異なるのは、線香の代わりに蝋燭を使用するため、香炉ではなく蝋燭立てが設らている点です。

石材選びについても自由度が高く、大理石や赤御影石などの新しい素材を積極的に採用してきました。
現在の日本の墓石で一般的な黒御影石の使用も、キリスト教式の墓石の影響によるとされています。

日本のキリスト教徒の方々は火葬を選択するのが一般的です。
基本は単独墓で、単独墓には洗礼名を刻字します。
また、家族墓も存在しており、家族での埋葬も可能です。

デザイン墓石の特徴とデザイン

参考：株式会社グローバルストーン｜京都府和束町デザイン墓石工事

従来の和型墓石や洋型墓石にとらわれない自由な発想で創られるデザイン墓石は、故人やご遺族の想いを独創的に表現する新しい形式として注目を集めています。
ニューデザイン墓石とも呼ばれ、石材の選択から形状、彫刻まで、個性的な表現が可能です。

デザイン墓石には、以下の2つの種類があります。

セミオーダー式は、フルオーダー式よりも費用が抑えられる点や耐久性の面から、選ばれることが多いようです。

近年は核家族化が進んだことにより、遠方の先祖代々のお墓の管理が困難になるケースが増加しています。
お墓の改葬を機に、宗教や地域の制約から解放されたデザイン墓石を選択する方々が増えています。
このような柔軟な選択肢は、現代の多様なライフスタイルに対応した解決策でしょう。

自由な表現力を活かしたデザイン墓石の構造

デザイン墓石は従来の形式にとらわれず、故人の個性や生き方を自由に表現できる独創的な構成が特徴です。
趣味や好みに応じた形状表現が可能で、イラストや言葉、家紋など、多彩な装飾要素を取り入れることができます。

人気の装飾モチーフは以下のようなものがあります。

• 花のデザイン： 桜、百合、蓮華などの優美な花々
• 意味深い漢字： 「偲」「悠」「想」「絆」「心」「和」「憩」
• 心のこもったメッセージ： 「ありがとう」「あなたに逢えてよかった」「心やすらかに」「また会う日まで」

デザインの検討時には、装飾要素の詰め込み過ぎによるバランスの崩れに注意が必要です。

現代では、CADや3Dシミュレーターを活用した事前確認が可能となり、完成イメージを把握しながら理想的なデザインを追求できます。

デザイン墓石の費用相場と予算の抑え方

デザイン墓石の費用は、セミオーダー式で150万円から200万円、フルオーダー式で250万円から300万円が一般的な価格帯です。

費用を左右する主な要因として、墓石の種類や石材量、デザインの複雑さ、彫刻方法の選択、制作期間などが挙げられます。
特に希少な石材使用や手の込んだデザインを採用する場合は、制作期間の延長も伴い、費用が高額になりやすいので注意が必要です。

墓石の彫刻技法には、基本的な「彫込み」から、立体的な「グラデーション彫り」、凹凸を活かした「浮かし彫り」、深い陰影の「中彫り」、繊細な「線彫り」まで、様々な種類があります。
高度な技術を要する特殊な彫刻方法を選択すると、それに応じて費用も増加します。

このように、各要素を慎重に選択することで、予算内でも理想的なデザイン墓石の費用を抑えることが可能です。

墓石デザイン選択の際は意匠権に注意

お墓のデザイン選びでは、意匠権の保護に関する正しい理解が重要です。
オリジナルデザインの普及により、石材店の対応範囲は広がっていますが、同時に意匠権に関するトラブルも増加しています。

意匠権は製品デザインの独占的な使用権を保護する制度で、他社の意匠登録済みデザインを無断で使用すると、重大な問題につながる可能性があります。
気に入った墓石デザインを安易に真似ることは避け、知らなかった場合でも意匠権侵害による損害賠償や使用差し止めなどの責任が生じる可能性があるので注意が必要です。

デザイン墓石を検討する際は、意匠権の有無を確認し、石材店と綿密に打ち合わせをすることが大切です。
既存デザインの模倣を避け、故人を偲ぶにふさわしい墓石づくりを心がけましょう。

まとめ

墓石のデザインは、和型・洋型・デザイン墓石の3つの基本形式があり、それぞれに特徴的な魅力があります。
伝統的な和型墓石は日本の文化に根ざした安定感のある形状、洋型墓石はコンパクトで現代的なデザイン、デザイン墓石は故人の個性を自由に表現できる柔軟性が特徴です。

選択の際は、宗教や地域性、予算、デザインの自由度を考慮するようにしましょう。
特にデザイン墓石を検討する場合は、意匠権にも配慮が必要です。
最終的には、故人を偲び、ご遺族の想いを形にできる、心のこもった墓石選びを心がけましょう。