遺品整理を始めるタイミングや時期には、特に決められた期限はありません。基本的には、ご自身の状況や気持ちの整理がついたころをタイミングとしても、なんら問題はないのです。
ただし、故人が亡くなってから死亡届の提出や相続税の申告などは期限が設けられているため、速やかに対応しなければいけないものもあります。
この記事では、遺品整理を始めるタイミングやスケジュールの立て方などを解説するほか、遺品整理の時期を逃した場合に起こり得るリスクも紹介していきましょう。
- 遺品整理をいつのタイミングで始めればいいか分からない
- 遺品整理を始める時期の決め方を知りたい
- 遺品整理が遅れた場合どうなるかも知っておきたい
遺品整理が大変なのはなぜ?考えられる主な理由を解説
遺品整理が大変な理由は、分かりやすいところでいうと「自分の持ち物ではないから」です。亡くなった方が大切なご自身の家族でも性格や考え方の違い、趣味趣向などが違うでしょう。それに伴い、持ち物も身に着ける物から集めている物までご自身ではいらないと思える物を持っています。
それだけにどこから手を付けていいか分からないのが、そもそもの大変な理由です。そのほかには、以下のような理由が主なものとして考えられます。
- 思い出がよみがえり処分できない
- 処分してよい物の判断基準が分からない
- 遺品の量が多すぎる
上記に挙げた主な理由を、詳しく解説していきましょう。
思い出がよみがえり処分できない
遺品整理を始めた時期が早ければ早いほど、まだ悲しみが癒えていないことと思います。そのため遺品を見るとどれもこれも生前故人が使っていた思い出がよみがえり、遺品の整理もさることながら気持ちの整理ができないというのが、主な理由でしょう。
このような場合は、無理に遺品整理を始めようとせず、気持ちの整理が付くまで時期を待つのもいいでしょう。無理に始めても、そのたびに思い出にかられ冷静な判断ができません。ほかの親族に代わって整理してもらうなど親族間で協力し合ってみてください。
処分してよい物の判断基準が分からない
これが冒頭で述べた「自分の持ち物ではないから」という理由の1つです。趣味で集めていた物などは特に、その品物の価値が分かりません。
こういったコレクター品に関しては、価値の分かる人に聞いてみたりインターネットや書籍で調べたりなど、あらゆる方法を試してみましょう。
遺品の量が多すぎる
故人が親や祖父母だった場合、長い人生の分、持ち物の量も多くなります。中には、人から貰った大切な物もあるでしょう。生前に誰から貰ったか、どこで買ったかを聞いている物に関しては忘れない内に別にまとめて保管しておくといいと思います。
そしてあとで、それらをどのように処理するか親族と相談しながら決めるのが、トラブル防止にもなるのでおすすめです。故人と親しかった友人・知人に貰ってもらうのも供養になると思います。
遺品整理を始めるタイミング【目安】
遺品整理には価値ある物も含まれている可能性があるので、その判別に時間がかかります。いる物といらない物に分けるだけでも時間と労力を伴うので、遺品整理を始めるタイミングは早ければ早いほどいいでしょう。
しかしやみくもに始めても返って大事な物まで捨ててしまうリスクもあるので、ある程度タイミングを見計らうのが寛容です。
ここでは一般的に、遺品整理を始めるタイミングにしやすい4つの時期をご紹介します。
- 葬儀終了後(亡くなってから3日~7日後)
- 各種手続き後(亡くなってから7日~14日後)
- 四十九日法要後(亡くなってから49日後~)
- 相続税を申告する前(亡くなってから10ヶ月以内)
上記は遺品整理を始めるタイミングにしやすい時期ですが、仕事や介護などご自身の状況と照らし合わせて、あくまで1つの目安として検討してください。
葬儀終了後(亡くなってから3日~7日後)
なるべく早く遺品整理を始めたいと考えるなら、葬儀終了後が一番早いタイミングになります。葬儀の手配から終了までバタバタと忙しいときを除いて、例えば葬儀前日の通夜のとき、葬儀当日、そして告別式という流れが一般的です。それをタイミングとして遺品整理を始めます。
しかし故人が賃貸に住んでいた場合はその部屋の明け渡し期限、そして施設などに入所していた場合、施設によっては「死亡後1週間以内の退所」などのルールが設定されていることもあります。
それらの時期を考慮して、タイミングは見計らいましょう。
各種手続き後(亡くなってから7日~14日後)
故人が亡くなると同時に敏速に進めておいた方がいい各種手続きがあります。死亡届や相続に関する手続き、社会保険や年金などは、それぞれ期限が定められているので注意が必要です。
死亡届は医師が死亡を確認し死亡診断書を受け取ってから7日以内、社会保険や年金の手続きは亡くなってから14日以内、相続税が発生する場合は亡くなってから10ヶ月以内の納税が必要です。
遺品整理のタイミングとしては、これらの手続きが終わってから始めると余裕を持って整理できるでしょう。
四十九日法要後(亡くなってから49日後)
一番遺品整理するのにベストなタイミングとしては、この四十九日法要後です。
四十九日とは、故人が亡くなってから丁度49日目であり、一般的に「喪明け」する日になります。喪明けするということは、故人の魂があの世に旅立つ筋目になる日なのです。
このときは親族が集まるので、遺品整理の際に効率よく進めることができます。親族で手分けして整理していく中で、遺品に対してそれぞれ思い出があるでしょう。そうしたときに、価値がある物が分かる人がいれば売却の検討もできます。
私の場合も父親の49日法要後、親族で実家に戻った際に、父親の部屋にあった遺品を見て兄弟が「これは生前、〇〇万で買ったと言っていた」と聞いて、「そんなにしたの?知らなかった」と驚いたことがあります。かなり高価であったこともあり、「ただ処分するのはもったいないね」となりました。そして、兄弟が買い取ってくれそうな業者を探して売却した経緯があります。
このように知らなかった情報を入手する絶好の機会もあるので、遺品整理の一番いいタイミングといえるでしょう。
相続税を申告する前(亡くなってから10ヶ月以内)
相続税が発生することが分かったら、故人が亡くなってから10ヶ月以内に納税する必要があります。相続財産となりうる物があるか早急に探して、相続税を計算しなければいけません。
大事なことなので、一人の判断では進めない方がいいです。必ず、親族に声をかけ相談するために話し合いの機会を設ける必要もあるでしょう。そうなるとそれなりに日数もかかるため、急ぐ必要があります。10ヶ月を超えてしまうとペナルティが課せられるので、覚えておきましょう。
相続税の申告・納税場所 | 故人(被相続人)が住んでいた住所地の税務署 |
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相続税の申告時期を過ぎた場合 | 延滞税が課される可能性があるので注意 |
相続税の基礎控除額の計算式 | 3000万円+(600万円×法定相続人数) |
尚、遺産総額が基礎控除額以内であれば、原則申告する必要はありません。
遺品整理を自分でやる場合と業者に依頼した場合のメリット・デメリット
遺品整理は大変な時間と労力を伴い、費用もかかります。故人が亡くなって葬儀の手配から各種手続きなど、お金のかかることが多いものです。
それだけに、遺品整理ではできるだけ安く抑えたいと考える方も多いと思います。そんな中で、遺品整理を自分でやる場合と業者に依頼した場合とで、費用面も含めてどのようなメリットやデメリットがあるのかを解説します。
自分でやる場合のメリット・デメリット
メリット | ・費用を安く抑えられる ・自分でペース配分が決められる |
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デメリット | ・時間や労力など手間がかかる ・精神的に負担になる |
遺品整理を自分でやるメリットは、自分のペースで余裕を持って整理できることとなんといっても費用を安く抑えられる点です。しかし、その分時間と労力を伴いますので、日程を調整するなどの手間がかかり精神的な負担があるのがデメリットといえるでしょう。
計画的に進めないといけないので、注意が必要です。
業者に依頼した場合のメリット・デメリット
メリット | ・時短になり作業が一括できる ・時間や労力などの手間が大幅に軽減できる |
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デメリット | ・費用がかかる ・大切なものを誤って捨てられる場合がある |
遺品整理を業者に依頼するメリットは、短い時間で効率的に作業が進むところです。特に、家具や家電など大きさや重さがある物などは、プロである業者の手を借りないと場合によっては危険も伴います。
反対にそれなりに時間や人手が増えると、それだけ費用も高くなるのがデメリットです。依頼する前に、ある程度は自分で整理しておく必要が生じてくるでしょう。その意味では、自分でやる場合と同じく計画的に進める必要があります。
遺品整理をしなかったらどうなるの?放置後のリスク
遺品整理には基本的に、いつまでという定められた期限はありません。そのため、「できるときに少しずつ」という気持ちで初めても問題ないのです。
しかし家賃の支払いや明け渡し手続き、各種申告や届け出そして故人が利用していたサービスの解約など、早めにしておかなければいけないことも多くあります。ご自身の仕事や生活の中での作業になるため、なかなか日程が組めないこともあるでしょう。
そうした中でもし遺品整理が遅れてしまったり、事情がありしなかった場合、どういったリスクがあるのでしょうか。考えられる主なリスクは、以下の4つです。
- 家賃や固定資産税など各種税金を払い続ける
- 故人が契約していたサービスの料金を支払い続ける
- 自分以外の遺族に勝手に遺品を処分される
- 空き巣に遭ったり火災が起きる可能性がある
これだけでも、かなりなリスクがあるのが分かると思います。それぞれのリスクを詳しく解説していきましょう。
家賃や固定資産税など各種税金を払い続ける
故人が賃貸に住んでいた場合は、遺品整理が遅れると毎月賃料が発生します。また持ち家だった場合も、固定資産税といって、毎年1月1日時点のその土地の所有者に課せられる納税義務です。故人が土地の所有者だった場合は、相続人が自動的に納税義務者になります。
持ち家が「特定空き家」に指定されている場合は、固定資産税が6倍になる可能性があるので、早急に解約や売却などの対応をしておきましょう。
故人が契約していたサービスの料金を支払い続ける
生前、故人が契約していたサービスには、さまざまなものがあるでしょう。早急に対応しておかないと、毎月その料金を払い続けるリスクが生じます。これには主に「デジタル遺品」と呼ばれる遺品があるのです。そのデジタル遺品の、考えられるサービスを以下にまとめました。
- web上で利用していたサイトのアカウント
- メールアカウント
- ネット銀行及び証券口座のオンライン取引
- 運営していたブログなどのページ及びサーバーやドメイン契約
パソコンやスマートフォンなど、故人が所有していた端末は相続人が引き続き使用できます。端末に保存されている写真や動画、メールのやり取りなども相続人は見れるのです。このようなデータを見付けた際は、早急に故人の交友関係やどのような趣味があったかなど調べておきましょう。
保存されたデータから故人の趣味趣向などが分かり、遺品整理の際に捨てずに残しておくべきものの判断が付きやすくなるメリットもあるので、早めの管理が必要です。
またアカウントの停止や解除などの手続きも早急に済ませておかないと、毎月のサービス利用料が発生しますので注意しましょう。
自分以外の遺族に勝手に遺品を処分される
ご自身にまだ心の整理が付かないなどの場合、ほかの親族に代わって遺品整理を頼むのも一法です。しかし、その場合でも親族によっては思い出もそれぞれ異なることもあります。そのため、その遺品に対して自分には思い出があり大切な物でも、思い出のない親族にはその大切さがわかりません。
特にそれが古い物で汚れや傷がある物だった場合、思い出がない親族には単なる不用品に見えてしまいます。そうなると知らない内に処分されてしまうリスクが生じるので注意が必要です。
自分に代わって親族に遺品整理を頼む場合も、思い出のある物や思い入れが強い物などは予め別の場所に保管して、「これは捨ててはいけない物」ということを伝えておくなどの対策をしましょう。
空き巣に遭ったり火災が起きる可能性がある
故人が一人で一軒家などに住んでいた場合、主のいなくなった家屋は「空き家」になってしまいます。あまり長くそのままにしていると、空き巣や火災、建物の倒壊などの恐れが出てくるので注意が必要です。
これらのリスクを回避するためにも、遺品整理後でも建物の管理は怠らないように気を付けましょう。遺品が残っている場合は、盗難などの被害を避けるためにも現金や貴重品などは、早めに回収して手元に置いておくようにします。
空き家になった建物を長く放置してしまうと近隣への迷惑になる上、場合によっては「特定空き家」となり、固定資産税が6倍になるリスクもあるので、早急に売却などの処分をしましょう。
遺品整理をいつからやる?時期を決めるためのスケジュールの立て方
期限のある届け出や各種手続きなどもあり、基本的にいつから始めてもいい遺品整理も急ぐ必要になることもあります。しかし遺品整理には価値のある物や重要書類なども含まれるので、焦ってやみくもに始めると誤って処分してしまい、親族間のトラブルに発展するケースも少なくありません。
そのためにも、事前に入念なスケジュールを立てておくことが重要になってきます。遺品整理を始める時期を決めるためにはどのようなスケジュールを立てれば良いか、効率的なスケジュールの立て方のポイントは以下の3つです。
- 重要期限から逆算する
- 遺品の量や種類別に必要な期間の割り出し
- 時間がない場合は遺品整理業者に相談
それぞれのポイントを、詳しく解説しましょう。
重要期限から逆算する
これまでにもお伝えしてきたように、遺品整理の中には死亡届や各保険証・免許証などの返却といった届け出や各種手続きで期限が定められているものもあります。期限を過ぎると、種類によっては延滞料が発生する物もあるので、まずはこの重要期限から遺品整理を始める時期を逆算する必要があります。
その中でも、特に相続など金銭に関する期限は優先的に進めていきましょう。優先すべき項目は以下の通りです。
- 相続税の申告期限
- 相続放棄の選択期限
- 賃貸物件の賃料発生のタイミング
- 固定資産税が発生するタイミング
上記の期限はそれぞれ明確にしておきます。その期限から逆算して遺品整理を始める時期を特定していくのです。計画的にスケジュールを組めば、後々相続や親族間のトラブルを防ぎ、経済的に損するということも避けることが可能になります。
遺品の量や種類別に必要な期間の割り出し
遺品整理は遺品の量や種類もさまざまあるので、想像以上に時間や労力がかかります。遺品整理を始める期限が決まったら、量や種類別にそれらにかかる期間を割り出すことです。
遺品整理を始めるタイミングはこれまでにも解説した通り、各種手続き後や四十九日法要後など親族が集まるタイミングが目安になります。
このときに始めやすくするためにも、事前に期間の割り出しをするのです。参考までに、期間を割り出すための手順を見ていきましょう。
- 必要な物と不要な物を分ける
- 不用品を分別し処分する(処分する前に遺品の供養が必要な場合もアリ)
- 遺品整理後の片付け・清掃をする
- 形見分けをする
遺品の量が多い場合や作業にかかる人数が少ない場合は、作業にもそれなりに期間を要します。早ければ数ヶ月、長いと半年程度かかることも考慮しておきましょう。故人が住んでいた期間が長いと、それに比例して遺品の量も多いので長いスパンで考えることが寛容です。
また遺族であるご自身が、故人宅に行くまでの距離が遠い場合も移動にかかる時間を考える必要があります。それによって「故人宅で整理する時間がどのくらいになるか」、「その時間を月にどのくらいのペースで通って作業ができるか」など、綿密な計画が重要になってきます。
できるだけスケジュールには、余裕を持たせて計画を立てるようにしましょう。
時間がない場合は遺品整理業者に相談
遺品整理にかかる費用を抑えたくても、作業にかかる時間や人手が少ないなどの理由で自分でやるには限界もあると思います。その場合は無理をせず、遺品整理業者に相談して依頼するかの検討をするのも一案です。
業者にまず相談をしてみて、遺品整理の段取りを一緒に考えてもらいます。できるだけ複数社に相談してみて、作業の内容的にも費用的にも納得のいく業者に依頼するようにしましょう。
ここで、遺品整理業者が当日どのような段取りで作業をしてくれるか、以下でまとめてみました。
- 資材の準備と物損防止のための養生
- 不用品と必要な遺品の仕分け
- 遺品の搬出と処分
- 整理後の清掃等
遺品整理業者に依頼すれば、重要書類や貴重品の探索をしてもらえたり遺品の供養や形見分けの手配、遺品の買取りなども行ってくれる業者も多数あります。見積は無料でしてもらえる業者が多いので、できるだけ現地で立ち合いながら見積もりを取ってもらいましょう。
【まとめ】遺品整理を始める時期は心の準備も大切
今回は遺品整理を始める時期について、その目安やタイミングと遺品整理が遅れた場合のリスクなどをご紹介してきました。
これまでの解説をおさらいしてみましょう。
- 一般的な遺品整理を始めるタイミング:「葬儀直後」「諸手続き後」「四十九日法要後」「相続税の申告前」
- 遺品整理が大変な理由:「思い出がよみがえり処分できない」「処分していい物の判断が難しい」「遺品の量が多すぎる」
- 自分でやる場合のメリットデメリット:メリット「費用が抑えられる」「自分のペースで進められる」デメリット「時間と労力がかかる」「精神的負担」
- 遺品整理業者に依頼するメリットデメリット:メリット「時短で作業が一括できる」「時間と労力が減る」デメリット「費用がかかる」「誤って遺品を処分されてしまう」
- 遺品整理しない場合のリスク:「故人が契約していたweb上のサービス料金を払い続ける」「遺品の価値を知らずに勝手に親族に処分されてしまう」「空き巣・火災・倒壊などの恐れがある」
- スケジュールの立て方:「重要期限から逆算する」「遺品の量や種類別に必要な期間を割り出す」「時間がない場合は遺品整理業者に相談する」
故人が亡くなってからは、葬儀の手配や各種手続きなど慌ただしくて、悲しみに浸っている暇がないこともあると思います。そんな中でも遺品整理はそれらを丁寧に仕分け、処分などの方法を考えることも故人への供養にもなり得ると考えられるのはないでしょうか。
遺品整理は、故人への想いも込めて丁寧にして差し上げてくださいね。