遺品整理は、人生の中でたびたびあることではありません。それだけに、親族に不幸があり遺品整理をしなければいけない状況になったとき、「さて、何から始めればいいんだろう?」と思うでしょう。
しかしそれ以前に、突然のことで精神的にショックを受けていることもあると思います。遺品を見るだけで在りし日の記憶がよみがえり、つらい気持ちが込み上げるものです。
「つらくて処分できない」と、いつまでも手が付けられない状態になるでしょう。こうしたとき、「そもそも遺品整理って必要?遺品整理する意味ってあるのかな?」という疑問につながる方もいるようです。
この記事では、遺品整理の意味や必要性について解説するほか、遺品整理を始める時期と流れも紹介していきます。
- 遺品整理がつらくてなかなか始められない。
- 遺品整理をする意味と必要性が知りたい。
- 遺品整理を始める時期や流れを知りたい。
遺品整理とは何か?意味や必要性を知ろう
遺品整理について、詳しい意味や必要性を解説していきます。遺品の中には遺産となるものも含まれますので、それについても詳しく見ていきましょう。
遺品整理の意味
遺品整理とは、故人が生前使っていた生活用品や思い出の品を片付けていく作業のことです。中には、骨董品や美術品、趣味で集めていたコレクター用品なども、多数出てくることもあります。
貴重品となる物は、貯金や不動産、ときには借金などマイナスとなる物の整理に追われることもあるのです。厳密にはこれらの貴重品の整理は、「遺産整理」になります。
遺産に関係する物は、できるだけ早く整理して然るべき処置を取る必要があります。そのほかの遺品に関しては遺族の気持ちが落ち着いたときに初めても問題ありません。
遺品整理の必要性
遺品整理はなぜ必要か?考えたことがあるでしょうか。単純に、それらを使っていた持ち主がいなくなり使い道がなくなったから、いらない物は処分して整理するという考え方で問題ありません。
しかし、そのほかには遺品整理が必要とされる理由があります。以下に、遺品整理の必要性を挙げてみました。
- 遺品のほかに貴重品など遺産とされる品物の対応も含まれるから
- 賃貸物件の場合、退去予定日に合わせて整理する必要があるから
- 遺品の量が多いと、部屋が占領され住まい全体の物が片付かないから
- 遺品によりいつまでも思い出に囚われ、心の整理がつかないから
上記のように、必要性と考えられる要因はたくさんあります。そして何より、最後の項目にある「心の整理がつかない」これに尽きるのではないでしょうか。しっかり前を向いて人生を歩んでいくためにも、遺品整理は心の整理・けじめを付ける一つのターニングポイントになります。
遺品整理はなぜつらい?考えられる5つの理由
遺品整理がなかなか進まない、時間も体力もないなど、気付けば大量の遺品が10年放置状態にあるという人も多く存在します。考えられる主な理由を5つ挙げてみましょう。
- 遺品を見るたび故人を思い出してつらい
- 精神的・体力的負担でつらい
- 遺品の処分に抵抗を感じてつらい
- 整理の始め方が分からないので不安でつらい
- 遺品整理を巡って親族間でトラブルになるのがつらい
遺族の心情は計り知れないものがあると思います。それぞれの想いを詳しく解説していきましょう。
遺品を見るたび故人を思い出してつらい
つらい理由としては一番多い理由だと思います。特に故人が、親や兄弟など自身に一番近い存在だった場合はなおさらです。
生前使っていた遺品を見て、そのときの情景や故人が言っていた言葉、それについて交わした会話の内容など、思い出せばたくさん出てくるでしょう。思い出してつらくなるから遺品が見れなくなってそれが結果、長年の放置状態につながります。
精神的・体力的負担でつらい
意を決して遺品整理を始めたものの、遺品整理は考えている以上に精神的にも体力的にもかなり負担がかかります。いる物といらない物の判別も、一人では難しいこともあるものです。
自身の生活の中での作業になるので時間の制限もあり、無理に進めると間違いも起こりやすいので注意する必要があります。
遺品の処分に抵抗を感じてつらい
心情的なことが主な理由になりますが、故人が大切にしていた物と分かっている品物の場合は特に、処分することに抵抗を感じる人も多いと思います。
また、その品物に思い出はないが大切だったのかな?と思うと、処分して良さそうに見えても抵抗を感じるということもあるでしょう。せっかく整理を初めても、そう思うと手が止まってしまう経験がある人も多いはずです。
整理の始め方が分からないので不安でつらい
いざ遺品整理を始めてみると、想像以上に遺品の量が多かったり大切にしていた思い出がよみがえったりすると、「どこから手を付けていいか分からない」ということがあるでしょう。
結局、手が付けられず放置している間に、今度は別の親族が逝去して遺品がさらに増えたという人もいるのではないでしょうか。こうなると思い出も時間もさらに倍増してますます手が付けられず、始め方が分からなくなってしまいます。
遺品整理を巡って親族間でトラブルになるのがつらい
つらいけど早く遺品整理を始めなきゃと思うと、一人で少しずつでも始める人もいると思います。賢明な考えだと思いますが、一人でやると遺品に対する思い入れが自分だけの概念で判断してしまうので危険です。
自分に思い出がなくても、ほかの親族にはたくさん思い出が詰まっている物もあります。そうしたときに、自分だけの判断で不要品として処分してしまうと、あとで親族間のトラブルになりやすいです。
遺品整理がつらいときの対処法
前述したように、遺品整理はつらいだけにその想いに駆られ過ぎると後々さらに大変な作業になってしまいます。つらい気持ちで遺品整理が進まないとき、どのように対処すればいいのか?その方法を4つにまとめてみましたので参考になさってみてください。
- 一人でやらずできるだけ複数人でやる
- 遺品整理スケジュールを立てる
- 自分の気持ちが落ち着いてから少しずつ始める
- 遺品整理業者に依頼して負担を減らす
一人でやらずできるだけ複数人でやる
遺品整理はできるだけ親族の協力のもと、複数人でやることをおすすめします。複数人でやることのメリットは、単純に一人でやるより効率的に作業が進むということもメリットの一つです。そのほかには、以下のようなメリットがあります。
- 捨てていい物か判断に迷ったときにすぐに相談できる
- 思い出話をしながら進められるので気持ちの上でも負担を軽減できる
- 家具など重く大きい物の搬出作業を複数人で協力してできる
家具などの運び出しは、断然人の手を借りた方が体力的にも負担が軽減できます。一人では、誤って大きな箪笥の下敷きになったり怪我をしたりする危険もあるので、大きい物は必ず複数人いるときにやるようにしましょう。
遺品整理スケジュールを立てる
遺品整理を始める前には、必ず作業する日程決めなどスケジュールを立てておきましょう。故人が一人暮らしだった場合、親族それぞれに仕事や介護があったり遠方だったりするので、日程決めは特に重要です。
具体的には、以下のことを要点として予定を立てていきます。
- 1日でできる作業範囲を決める
- 作業をする部屋の順番を決める
- 捨てる物・残すもの・売る物とに分ける
遺品整理を一度にやってしまおうとするのは、無理があります。一軒家の場合は焦る必要はありませんが、賃貸物件だった場合は、退去日までという制限があるので焦りがちです。
事前に余裕を持ってスケジュールを立てて、いつまでには終わらせるという目標を立てておくと作業の励みになるので試してみてください。
自分の気持ちが落ち着いてから少しずつ始める
故人がなくなって死亡届や各種届出や申請など期限が定められている物以外の、故人の持ち物全般に関してはいつまでという期限がないので、焦る必要はありません。
一番いいのは、自分の気持ちが落ち着いてから少しずつ始めることです。遺品整理は、故人と向き合いきちんとお別れする一種の儀式になります。気持ちが落ち着いているときなら、思い出に浸りながらゆっくり整理ができるでしょう。
それにより、自分の気持ちの整理もできるというものです。
遺品整理業者に依頼して負担を減らす
遺品の量が多く、親族が集まって作業してもやはり限界はあります。特に、遺品の中には供養した方がいい物もあるでしょう。そのような場合、遺品整理業者に依頼すると供養してもらえる業者もいるので安心です。その際「遺品整理士」という民間資格を持っているスタッフが在籍している業者を選ぶと安心して任せられます。
遺品整理業者が依頼者から「供養してほしい」と依頼されることが多い遺品は、以下のような遺品が多いです。
- メガネ・腕時計
- 故人の作品
- 写真やアルバム
- 仏壇・遺影・位牌・神棚
- 衣服や装飾品
- 人形
- 布団
- 車や家具・家電
- 食器
- おもちゃ
このほかにも買取サービスもあるので、作業にかかる負担が大幅に軽減できます。買取サービスを利用すると、遺品整理でかかった費用から買取額を相殺してくれるので、費用を減らせてお得です。
遺品整理を始める時期は親族が集まるタイミングがベスト
遺品整理は1人で始めるより、親族で協力して始めた方が効率的です。しかし、親族それぞれに日々の生活の中での作業になるため、都合を合わせる必要があります。そのようなときに親族が比較的、集まりやすいベストなタイミングが以下の通りです。
- 葬儀直後
- 四十九日法要後
- 新盆・一周忌・三回忌
それぞれのタイミングを見ていきましょう。
葬儀直後
親族が集まりやすいタイミングとしては、一番ベストといえるのが葬儀前日や当日です。葬儀前日にお通夜をする場合も親族なら遠方から来て泊まり掛けになることもあるでしょう。葬儀が終わっても死亡届や手続きなど忙しい時期もありますが、葬儀直後なら遺品整理をする日程を予め相談することもできます。
双方で日程を組みやすいので、葬儀直後はベストなタイミングといえるでしょう。
四十九日法要後
葬儀直後の次に、親族が集まりやすい日程として四十九日法要があります。四十九日とは、「喪明け」といって故人が亡くなって、あの世に上がれる日が49日目なのです。魂が天に召される有難い日となります。
遺族にとってもこの日は一つの筋目になるので、このときに遺品整理をすれば本当の意味で、故人とお別れができる最良の日になるといえるのではないでしょうか。
新盆・一周忌・三回忌
四十九日のときに比べると、やや集まる親族も限られる場合もあるのではないでしょうか。私の場合も、父の一周忌や三回忌のときは、それぞれの仕事の都合もあり全員は集まれませんでした。皆が皆そうとは思いませんが、葬儀や四十九日のときに比べて難しい傾向があるような気がします。
いずれにしても何かの筋目で集まれるときは必ずあるので、そのときにしっかり相続人の確認の話し合いをする傍ら、遺品整理もした方がいいでしょう。
遺品整理の主な流れを解説
遺品整理を始める際は、計画的に始めることが効率も良いのでおすすめです。具体的に、遺品整理の主な作業の流れを分かりやすく解説していきます。
遺品整理の流れ
具体的には、以下のような流れをリストにして準備しておきます。
- スケジュールを立てる
- 遺品の仕分け
- 遺品の供養・形見分け
- 不用品処分
- 部屋の掃除
やることが決まっていれば、スムーズに作業が進められます。上記の流れをリスト表にして1つ終わるごとに線を引いていくなり、チェックを入れていくなりすると達成感も味わえますので、是非やってみてください。
1:スケジュールを立てる
何はともあれ、まずはスケジュールを立てて遺品整理を順調に進ませる計画を立てておくことが先決です。スケジュール表は自分でパソコンなどで作ってもいいですが、予定を書き込めるカレンダーなどを活用すると手間がかからず分かりやすいでしょう。
カレンダーを使う場合は、各日付ごとにその日やる作業項目を記入するなど使い方は自由です。それぞれの日程に作業を分散させれば、一度にやろうとしないで済みます。全体的に、いつまでに作業を終わらせるなどの作業終了予定日なども決めておくと、目標ができるので作業効率が上がるでしょう。
2:遺品の仕分け
スケジュールが決まったら、次にその日やる遺品の仕分けに取り掛かります。大きくは、「必要な物」と「不要な物」です。あまり細かく分けすぎると返って作業が複雑化するので、とりあえず大きくいる物といらない物に分けていきましょう。
その後、いる物の中から貴重品や買取りに出してもいい物などに分類していきます。いらない物も、一目で捨てていいと判断できる物はその場でどんどん捨てていきましょう。なるべく作業する部屋は余計な物がない方がいいためです。
ただし、本当に捨てていいかは親族に相談してからにしましょう。自分にはゴミに見えても、ほかの親族が見ると大切な物である可能性もありますので注意が必要です。
また遺品の中には、必要な物と不要な物とはっきり区別できない物も出てくると思います。そうした場合は、「保留箱」などを作って、とりあえず置いておく物として一ヶ所にまとめておきましょう。全体の作業が終わったときに、ゆっくり仕分けていけば安心です。
3:遺品の供養・形見分け
遺品の仕分けの際に、「供養しておきたい、した方がいい」と思われる遺品も出てきます。仏壇や位牌などはもちろん、故人が愛用していたメガネや腕時計といった物です。そのまま買い取りに出しても良いですが、愛用品などは故人の念が籠っているとも思えて簡単に回収や買取りに出すのも忍びないでしょう。
このような遺品は、専門の遺品整理業者に依頼すると供養してもらえます。主に、遺品整理のオプションサービスとして入っていることが多いサービスです。業者に依頼する場合は、こうしたサービスがあるかどうかも確認してください。
また、親族間や親しい友人などで形見分けをするのも供養の一つになります。義務はないですが、日本に古くからある文化でしたので、覚えておいて損はないでしょう。
4:不用品処分
完全に必要な物と不要な物に分けられたら、不要な物の処分をしていきます。不用品の処分方法は、以下のようなものです。
- 不用品回収業者
- 自治体のゴミ収集
- リサイクルショップ
3つの処分方法がありますが、それぞれのメリット・デメリットも確認しておきましょう。
処分方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
不用品回収業者 | ・値段の付かない物も回収してくれる | ・自治体のゴミ収集より処分料が高い ・回収料金が業者により異なり基準が分かりにくい ・悪徳業者が多い |
自治体のゴミ収集 | ・予めスケジュールを立てておくとスムーズに進む | ・曜日や時間が決まっているため、いつでも回収してくれるわけではない |
リサイクルショップ | ・インターネットで査定を受け付けている ・個人が大切にしていた品に値段が付く場合もある | ・すべて買い取ってくれるわけではない |
5:部屋の掃除
部屋の掃除も、自分たちでやれる範囲の掃除はしておいた方がいいです。しかし、遺品が長年放置状態にあった部屋は、ときとして染みついた汚れや匂いが籠っているなど、普段の掃除では取れないこともあると思います。
このような場合は、遺品整理業者で「特種清掃」というオプションサービスを利用すると安心です。
特種清掃とは、一人住まいの孤独死や自殺などで発見が遅れた場合、体液や腐敗臭などが染みつき通常の清掃では取れない状態になります。そうしたときに、業者が特殊な機器や洗浄剤で行う清掃サービスのことです。
孤独死や自殺でなくても、通常の清掃では取れない汚れなどに対応してくれるサービスですので、依頼する業者に確認してみましょう。
【まとめ】遺品整理は心の整理!お別れと再出発のきっかけになる
今回は、遺品整理の意味やつらい気持ちの対処法と遺品整理を始める時期と流れについてもご紹介してきました。遺品整理は、ただでさえ時間も労力もかかる作業です。
そのような作業をつらい気持ちがある中でやるのは、少し無理があると思います。無理をせず、気持ちが落ち着いたときに少しずつ始めるのがおすすめです。
考え方としては、「遺品整理は心の整理」と考えてみてはいかがでしょうか。遺品整理をすることで、故人にきちんとお別れすることができる。そして、ご自身の再出発のきっかけになります。
そう考えると、遺品整理も一つの供養になると思います。焦らず、きちんと故人に向き合える大切な時間と捉えて頑張ってみましょう。