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AIで終活を始める方法|遺言を書く前に整理したい家族・財産・希望
結論:チャット型AIが終活で役立つのは、遺言書やエンディングノートを「書く前」の整理です。AIは遺言書を代わりに作ってくれる道具ではありませんし、AIとの対話だけで法的に有効な遺言書ができるわけでもありません。それでも、「何から考えればいいか分からない」という終活最初の壁を越えるうえで、AIは頼れる相手になります。この記事では、AIが役立つ3つの場面と任せてはいけないこと、入力を避けたい個人情報、そして30分でできる「家族・財産・希望」の整理手順を、実際にそのまま使える質問例つきでまとめました。
専門家にも広がる「AI×終活」という考え方
「AIで終活」と聞くと、まだ遠い話のように感じるかもしれません。けれども、相続を専門とする士業の側でも、AIを終活の入り口に使う取り組みが始まっています。相続専門の税理士法人レガシィ(レガシィマネジメントグループ)は2026年7月、AIとの対話を通じて遺言を書く前の「想い・家族・財産」を整理する無料セミナーの開催を発表しました。私がこの発表を読んで一番うなずいたのは、AIの位置づけです。遺言を代わりに書く道具ではなく、本人の考えを引き出すための対話相手——長年終活のご相談を受けてきた実感として、この線引きは本当にそのとおりだと感じました。
そしてこの位置づけは、私たちが日常のAIサービスを終活に使うときにも、そのまま当てはまると思っています。つまり、「AIに作ってもらう」のではなく「AIと話しながら自分の頭を整理する」という使い方です。この記事でも、一貫してこの使い方を前提にします。
AIが役立つ3つの場面
終活の相談を受けていると、つまずくポイントはたいてい同じです。「何から始めればいいか分からない」「書き出したいが項目が思いつかない」「家族にどう切り出せばいいか分からない」——チャット型AIは、この3つの場面でよい相棒になります。
場面1. 頭の中の「気がかり」を言葉にする
終活は、やることが多いように見えて、実際に最初に必要なのは「自分は何が気がかりなのか」をはっきりさせることです。AIに「終活を始めたい。考えを整理するための質問を1つずつ投げかけてほしい」と頼むと、対話しながら自分の関心事(お金なのか、家なのか、家族関係なのか、医療の希望なのか)が見えてきます。白紙に向かって書くより、質問に答えるほうがずっと楽です。
場面2. 財産の「ありか」リストの抜け漏れチェック
財産の整理でまず必要なのは、金額ではなく「どこに何があるか」の一覧です。AIに「財産一覧を作るときに抜け漏れしやすい項目を挙げて」と聞くと、預貯金・保険・証券のほか、ネット銀行・ポイント・サブスク・スマホ内の資産など、忘れがちな項目のリストを出してくれます。デジタル関係の整理はデジタル遺品の整理方法の記事とデジタル遺産の相続対策の記事でも詳しく解説しています。
場面3. 家族への伝え方・話し合いの準備
「縁起でもない」と言われそうで切り出せない——終活が止まる大きな理由のひとつです。AIに「親(または子ども)に終活の話を切り出す自然な言い方を提案して」と頼み、出てきた案を自分の家族に合わせて直していくと、話し合いのハードルが下がります。親御さんと話す場合の具体的な項目は親が元気なうちに聞いておくこと30項目が使えます。
AIに任せてはいけないこと(法務・税務の判断)
一方で、AIの答えをそのまま採用してはいけない領域があります。次のような法務・税務の個別判断です。
- 相続人の範囲・遺留分:誰が相続人になるか、最低限保障される取り分がどうなるかは、家族構成によって結論が変わります。
- 遺言書の方式・有効性:書き方の要件を満たすか、内容が意図どおり機能するかの判断。
- 相続税の計算・特例の適用:税額や特例が使えるかどうかは、財産の内容と家族の事情しだいです。
- 不動産の分け方・名義:登記や評価が絡む判断。
- 保険・年金の個別の受給可否:契約内容や加入記録によって異なります。
AIは自然な文章で、もっともらしく間違えることがあります。しかも、間違いかどうかを見分けるには結局その分野の知識が必要です。だからこそ、この領域は「AIには質問の整理までを頼み、答えは専門家と公的機関で確かめる」と最初から決めておくのが安全です。誰に相談すればよいかは司法書士・行政書士の無料相談サービス比較の記事にまとめています。
AIに入力するのを避けたい個人情報
AIとの対話は便利ですが、入力した内容がどのように扱われるかはサービスの規約や設定によって異なります。終活の整理は個人が特定できない形で行うのが原則です。次のものは入力しないでください。
- 氏名・住所・電話番号・生年月日(本人・家族とも)
- 口座番号、銀行名と残高の具体的な組み合わせ
- マイナンバー、戸籍・本籍の情報
- パスワード・暗証番号(AIに限らず、どこにも書き込まない)
- 病名・通院先など健康状態の詳細と実名の組み合わせ
心配になるかもしれませんが、実は伏せたままでも整理は十分できます。「長男」「A銀行の普通預金」「持ち家(戸建て)」のような置き換えで、AIとの対話には何の支障もありません。実名や口座番号が必要になるのは、エンディングノートや専門家との相談など、手元に残す段階だけです。
30分でできる「家族・財産・希望」の整理手順
ここからは実践です。紙かメモアプリと、ふだん使っているチャット型AIを用意してください。合計30分、4つの手順で「遺言を書く前の整理」の土台ができます。
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家族構成と「気がかり」を書き出す(5分)
まず、配偶者・子ども・親・きょうだいなどの家族構成を(実名は使わず「長男」「妹」のように)書き出します。次に、AIに質問役を頼んで、いま気になっていることを言葉にします。「家をどうするか」「長男と次男の関係」「お墓」など、単語の羅列で構いません。
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財産の「ありか」を書き出す(10分)
金額は書かなくて構いません。銀行名・保険会社名・証券会社の有無・不動産の種類・ローンや借入の有無・ネット銀行やサブスクの有無を、「ある/ない」ベースで書き出します。書き終えたら、AIに抜け漏れしやすい項目を挙げてもらい、自分のリストと見比べます。
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希望を言葉にする(10分)
「誰に何を残したいか」「医療や介護で望むこと・望まないこと」「葬儀やお墓の希望」を、AIの質問に答える形で言葉にしていきます。うまくまとまらなくても、「決めていない」と書くこと自体が立派な整理です。ここで出てきた内容は、後でエンディングノートの書き方ガイドに沿ってノートへ清書できます。
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「専門家に確認すること」を分ける(5分)
ここまでのメモの中で、法律や税金が絡む疑問(「遺言書は必要か」「税金はかかるのか」など)に印をつけ、要確認リストとして別にまとめます。これはAIに答えを出させるのではなく、専門家に相談するときの質問リストにします。
書き出した内容は「事実・希望・要確認」に分ける
30分の整理で出てきたメモは、次の3つに分類すると、その後の行き先がはっきりします。
| 分類 | 内容の例 | 整理のしかた | AIとの相性 |
|---|---|---|---|
| 事実 | 家族構成/財産の「ありか」(銀行名・保険会社名・不動産の有無)/加入しているサービス | 一覧に書き出して、エンディングノートに清書する | 項目の抜け漏れチェックに向く |
| 希望 | 誰に何を残したいか/医療・介護の希望/葬儀やお墓の希望 | 言葉にして、ノートに書き、家族と共有する | 考えを引き出す質問役に向く |
| 要確認 | 相続人の範囲・遺留分/遺言書の要否と方式/相続税 | 専門家・公的機関への質問リストにする | AIに答えを任せない(質問の整理までにとどめる) |
「事実」と「希望」はエンディングノートの領分、「要確認」のうち財産の分け方など法的な意思表示が必要なものは遺言書と専門家の領分です。この役割分担はエンディングノートと遺言書の違いの記事で詳しく解説しています。
そのまま使えるAIへの質問例
個人情報を含まず、そのままコピーして使える質問例です。
- 終活を始めたいです。考えを整理するための質問を、私に1つずつ投げかけてください。
- 財産の一覧を作ります。抜け漏れしやすい項目を10個挙げてください。金額は書きません。
- 家族に終活の話を切り出す自然な言い方を、いくつか提案してください。相手は「70代の親」です。
- エンディングノートに書く「医療の希望」を考えるための質問を、やさしい言葉で投げかけてください。
- 次のメモを「事実」「希望」「専門家に確認すること」の3つに分類してください。(メモには個人名や口座番号を書かないこと)
逆に、「私の遺産は誰にいくら渡りますか」「この遺言の文面で有効ですか」のような個別の法的判断を求める質問は、答えが返ってきても採用しないでください。前の章で述べたとおり、これは要確認リスト行きです。
AIが書いた文章は、そのままでは遺言書にならない
ここは特に大切な注意点です。整理が進むと、AIに「遺言書の下書きを作って」と頼みたくなりますが、AIが出力した文章は、そのままでは遺言書として使えません。
この記事を書くにあたって、私は東京法務局の「遺言書を作成するときの注意点」のページを読み直しました。あらためて感じたのは、自分で書くタイプの遺言書(自筆証書遺言)の方式が思いのほか細かい、ということです。同局の案内によれば、財産目録などの例外を除き、全文・作成日付・氏名を遺言者本人が自書(手書き)して押印することが民法で求められています。つまり私の理解では、AIの文章を印刷して署名だけしたものは、この方式を満たしません。また、方式を満たすように手書きしたとしても、内容が法的に意図どおり機能するかどうかは別の問題です。同局が紹介している「よくある誤り」(訂正方法の不備や、手書きすべき部分をパソコンで作成してしまう例など)を読むと、独学だけで仕上げることの難しさを実感します。
なお、書き上げた自筆証書遺言を法務局に預けられる自筆証書遺言書保管制度(2020年7月開始)もあります。紛失や書き替えの心配を減らせる制度ですが、預かってもらえたことと内容の有効性は別です。制度の詳しい手続きと手数料は一般家庭の遺言書の記事で、遺言書の種類ごとの費用の比較は遺言書の種類と費用の記事で解説しています。
AI終活チェックリスト
この記事の内容を、実行できたかどうか確かめるためのリストです。すべてに印がつく必要はありません。
- AIの使いみちを「書く前の整理」と決めた(作成や判断は任せない)
- 実名・住所・口座番号・マイナンバー・暗証番号を入力していない
- 家族構成と「気がかり」を書き出した
- 財産の「ありか」一覧を作った(金額は書かなくてよい)
- 希望(誰に・何を・医療・葬儀)を言葉にした
- メモを「事実・希望・要確認」に分けた
- 要確認リストを、専門家への質問リストとして残した
- 整理したメモやノートの保管場所を家族に伝えた
終活全体の進め方をひととおり確認したい方は、終活チェックリスト完全版(印刷用PDFつき)もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q1. AIに頼めば、遺言書を自動で作ってもらえますか?
いいえ。チャット型AIにできるのは、考えの整理や下書きメモづくりまでです。自筆証書遺言は、財産目録などの例外を除き、全文・日付・氏名を遺言者本人が手書きして押印する必要があるため、AIの文章を印刷して署名しただけでは方式を満たしません。内容が法的に意図どおり機能するかどうかも別の問題です。遺言書に仕上げる段階では、法務局の案内や司法書士・行政書士・弁護士などの専門家に確認してください。
Q2. AIに家族の名前や口座番号を入力してもいいですか?
おすすめしません。氏名・住所・口座番号・マイナンバー・戸籍の情報などは入力せず、「長男」「A銀行の普通預金」のような置き換えで十分整理できます。特にパスワードや暗証番号は、AIに限らずどこにも入力しないでください。入力した内容がどのように扱われるかは、利用するAIサービスの規約や設定によって異なります。
Q3. AIの答えが正しいかどうか、どうやって確かめればいいですか?
法律や税金にかかわる部分は、AIの答えをそのまま信じず、法務局・国税庁などの公的機関の案内か、司法書士・行政書士・弁護士・税理士などの専門家に確認してください。AIは自然な文章のまま、もっともらしく間違えることがあります。この記事の手順のように、わからない点を「要確認リスト」としてメモしておき、相談のときにまとめて質問するのが効率的です。
まとめ
- AIが役立つのは「書く前の整理」——気がかりの言語化・財産のありかの抜け漏れチェック・家族への伝え方の3場面
- 相続人の範囲・遺留分・遺言の方式・税金などの法務・税務判断は、AIに任せず専門家と公的機関で確認する
- 実名・口座番号・マイナンバー・暗証番号は入力しない。置き換えで整理は十分できる
- 30分の手順で書き出し、「事実・希望・要確認」の3つに分類すると行き先が決まる
- AIの文章はそのままでは遺言書にならない。自筆証書遺言は本人の手書き+押印が方式の要件
AIで整理した内容を、専門家に確認してみませんか
「要確認リスト」ができたら、次の一歩は専門家への相談です。家族構成と財産のありかが整理してあれば、相談は短時間で本題に入れます。初回無料で相談を受け付けている司法書士・行政書士の事務所もありますので、まずは相談先の選び方から確認してみてください。
遺言・相続の相談先を比較して選ぶ司法書士・行政書士の無料相談サービスの探し方
出典・参考
本記事の作成にあたり、次の情報を確認しました(いずれも2026年8月11日確認)。出典の文章・画像の転載は行わず、事実確認のために利用しています。制度の運用は変更されることがありますので、手続きの前に必ず最新の案内をご確認ください。
- 東京法務局「遺言書を作成するときの注意点」——自筆証書遺言の方式(全文・日付・氏名の自書と押印、財産目録の扱い、訂正方法)と、よくある誤りの事例
- 鳥取地方法務局「法務局における自筆証書遺言書保管制度(令和2年7月10日開始)について」——保管制度の開始時期と、制度が補う自筆証書遺言の課題
- 税理士法人レガシィ「【AI×遺言】で新しい終活体験を!無料セミナーを開催します」(PR TIMES・2026年7月9日)——専門家によるAI活用セミナーの実例と、AIを対話相手と位置づける考え方
- 税理士法人レガシィ「相続のせんせい セミナー案内」——相続専門家によるセミナー・相談機会の実例として参照
この記事について
執筆・監修:はじめての終活ガイド運営者(終活カウンセラー1級)。本記事は、運営者が上記の公的機関の案内やプレスリリースを読んだうえでの個人の感想・整理であり、法律・税務の個別の判断を行うものではありません。専門家(司法書士等)による監修は受けていません。遺言書の方式・保管制度に関する記述は上記の一次情報を確認のうえ書いていますが、制度の解釈や個別のケースへの当てはめは、司法書士・行政書士・弁護士・税理士など、それぞれの専門家にご相談ください。また、特定のAIサービスの利用や、AIへの入力内容の安全性を保証するものではありません。
- 公開日:2026年8月11日/最終更新日:2026年8月11日
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