実体験にもとづく記事|執筆・監修:終活カウンセラー1級
親が突然亡くなった日、
家族は何もわかりませんでした。
悲しむ前に、葬儀、連絡、銀行、携帯、保険、家のこと。
決めなければならないことが、次々にやってきます。
エンディングノートは、死の準備ではありません。
残された家族が迷わないために、今の自分から渡しておく連絡帳です。
エンディングノートの書き方を見る
※このページは、当サイト運営者の実体験をもとにしています。個人が特定されないよう、日時や場所などの表現を一部ぼかしています。
ここで扱うのは運営者の一例です。必要な備えはご家庭や財産の状況によって異なります。
公開日:2026年7月7日/最終更新日:2026年8月10日
エンディングノートは必要?
実体験から感じた結論
先に結論をお伝えします。理由は、このあとの体験談と解説でご説明します。
- エンディングノートがなくても、法律上の手続きは進められます
- ただし、口座・保険・契約・連絡先・本人の希望を、家族が手探りで探すことになります
- エンディングノートだけでは、通常、財産を移す法的効力は生じません。遺言書など目的に合う法的な方法を専門家と検討します
- 完璧に書く必要はありません。「家族が探せる手がかり」を残すことに意味があります
この記事では、親が突然亡くなったとき家族が何に困るのか、エンディングノートの必要性が高いのはどんな人か、最低限なにを残せばよいかをお伝えします。
「お父さんが亡くなったかもしれん」
ある日の18時過ぎ、兄から電話がありました。
最初に言われたのが、この言葉でした。
その時点では、何も分かりませんでした。本当に亡くなったのか。誰に連絡すればいいのか。自分はどこへ向かえばいいのか。何を持っていけばいいのか。葬儀はするのか。父がどんな見送られ方を望んでいたのか。
ひとつも、分かりませんでした。
悲しむ時間より先に、
「決めること」がやってきました
親が亡くなったら、まず何をするのか——。大きな悲しみより先に頭に浮かんだのは、驚くほど現実的なことでした。
人が亡くなった直後でも、残された家族には日常が続きます。
- 家族への連絡
- 移動手段の確保
- ペットの餌と水
- 宿泊先の手配
- 喪服や持ち物
- 葬儀社選び
- 火葬場と費用
- 死亡届
- 銀行口座
- 携帯電話の契約
- 保険の確認
- 年金の手続き
- 借金の有無
- 自宅の片付け
実家へ向かう途中、「直葬」という言葉を初めて詳しく調べました。葬儀の費用には、表示されている価格とは別に、火葬料や安置料、搬送費がかかる場合があることも、このとき知りました。
いちばん苦しかったのは、待つ時間でした。連絡が来ない。頭の中では考えが回り続けるのに、できることは何もない。翌日も、ホテルを出て、食事をして、タクシーを待つ。一見いつも通りの時間が流れるのに、心の落ち着かなさだけが消えませんでした。
分からないから、
家族だけで決めなければならない
手続きの多さよりも、「本人の考えが分からないまま決めること」が、いちばんの重荷でした。
- 葬儀はするのか、しないのか
- 直葬を望んでいたのか
- どこの銀行に口座があるのか
- 借金はあるのか
- 保険に入っているのか
- 携帯電話はどこと契約しているのか
- 誰に連絡してほしいのか
- 大切な書類はどこにあるのか
- 遺品は何を残してほしいのか
- 残された母の生活に必要な情報はどこにあるのか
葬儀場で兄弟と合流したとき、父には預金があり、借金はないと初めて聞きました。それが分かっているだけで、気持ちは少し軽くなりました。
逆に言えば——もし預金や借金の有無さえ分からなかったら、家族の不安はもっと大きかったはずです。
親が亡くなったら、まず何をするのか
ここからは、体験を踏まえた一般的な解説です。
一般に、最初の数日で必要になるのは、死亡診断書(または死体検案書)の受け取り、家族や親族への連絡、葬儀社への連絡、そして死亡届の提出です。死亡届は「死亡の事実を知った日から7日以内」に提出すると定められています(出典:法務省「死亡届」)。
ただし、最初からすべてを一人で完璧に進める必要はありません。多くのことは、葬儀社や役所の窓口が案内してくれます。その後の役所・年金・相続の流れは、家族が亡くなったあとの相続手続きの記事で時系列に整理しています。このページでは、手続きの羅列ではなく「家族が何に困るのか」をお伝えします。
すべてを解決できなくても、
家族の迷いは減らせます
エンディングノートがあっても、亡くなったあとの手続きがなくなるわけではありません。
それでも、あの日「分からなかったこと」の多くは、1冊のノートに書けることでした。
- 本人の希望を確認できる——「これでよかったのか」と迷う時間が減る
- 連絡先を探す時間を減らせる
- 財産や契約の全体像を把握できる
- 家族間の認識違いを減らせる
- 大切なものを誤って処分するリスクを減らせる
- 悲しむための時間を、少しでも取り戻せる
エンディングノートは本当に必要?
——「意味がない」と感じる方へ
正直にお伝えします。エンディングノートがなくても、死後の手続き自体は進みます。
その意味では「なくても何とかなる」のも事実です。
「意味がない」と言われる理由は主に3つあります。法的効力がないこと。書いても家族が存在を知らなければ使われないこと。情報が古くなると役立たないことがあること。いずれも事実ですが、保管場所を家族に伝え、年に1回見直すだけで、この弱点の多くは解消できます。なお、遺言によって亡くなった後の財産の分け方を指定する場合は、方式を満たす遺言書が必要です。一方、財産を渡す方法には生前贈与・死因贈与・信託もあり、将来の判断能力への備えには任意後見など別の制度もあります。エンディングノートとは役割が異なるため、どの方法が必要かは司法書士・弁護士など専門家にご相談ください。
そのうえで、エンディングノートの必要性が高いご家庭があります。それは、本人しか知らない情報が多い家庭です。次に当てはまるなら、書いておく価値は十分にあります。
- 親が一人暮らし、または家族と離れて暮らしている
- 家族が、口座・保険・契約の全体像を把握していない
- ネット銀行やスマホ決済など、通帳のない資産がある
- 葬儀やお墓の希望を、家族に話したことがない
- ペットや持病など、本人でないと分からない日常がある
- 再婚・事実婚・お子さんがいないなど、家族関係に事情がある(この場合は遺言書など法的な備えもあわせて専門家へ)
逆に、家族がすべてを把握しているなら、急ぐ必要はありません。エンディングノートは義務ではなく、「分からない」を減らすための道具です。私たちの場合は、預金と借金の有無が分かっていただけでも救われました。もしそれすら分からなかったら——と考えたことが、このページを作った理由です。
最低限、これだけは残しておきたい
ここからも、体験を踏まえた一般的な整理です。市販のノートでなくても構いません。
手元の紙にこの項目を書くだけでも家族は助かります。詳しい書き方は書き方完全ガイドで解説しています。
1. 基本情報
- 氏名・生年月日・本籍
- マイナンバーカード・健康保険証などの保管場所
- 緊急連絡先(家族・親族・親しい友人)
2. 医療・介護
- 持病・服用中の薬
- かかりつけ医
- 延命治療に対する今の考え
- 介護についての希望
※医療の状況によって、希望がそのまま実現できるとは限りません。それでも「考えを知っている」ことが、家族の支えになります。
3. 葬儀・供養
- 葬儀をするか、しないか(家族葬・一日葬・直葬などの希望)
- 宗教者を呼ぶか、宗派、菩提寺の有無
- 連絡してほしい人のリスト
- お墓・納骨・散骨などの希望
- 遺影に使ってほしい写真の場所
※葬儀の形式に正解はありません。詳しくは葬儀の生前準備の記事へ。
4. 財産と負債
- 利用している銀行名・支店名(口座の存在が分かること)
- 証券会社・保険会社
- 不動産・年金
- クレジットカード
- ローン・借入・保証債務の有無
- 通帳・印鑑・契約書類の保管場所
※暗証番号やパスワードは書かないでください。ノートに書くのは「口座がどこにあるか」「書類がどこにあるか」まで。秘密情報は別の安全な方法で管理します(書いてはいけないことの記事参照)。残高の正確な金額は変動するため、無理に書く必要はありません。
5. デジタル情報
- 携帯電話会社・スマートフォンの契約状況
- Apple ID・Googleアカウントなどの存在
- メールアドレス・SNS
- ネット銀行・ネット証券の有無
- サブスクリプション(月額契約)の一覧
- 写真やデータの保存場所
- 解約・削除・残してほしいサービスの希望
※ここでもパスワードそのものは書きません。整理の手順はデジタル遺品の記事で解説しています。
6. 生活と大切なもの
- ペットの世話(餌・かかりつけの動物病院・託し先の希望)
- 自宅・車・倉庫などの鍵の場所
- 公共料金・賃貸・住宅ローンの契約
- 残してほしい物・処分してよい物
- 写真・手紙・思い出の品
- 家族へ伝えたい言葉
最初の1ページだけでも、家族は助かります
全部で6分類ありますが、一度に書く必要はありません。まずはこの5つだけで十分です。
- 緊急連絡先
- 葬儀についての希望
- 利用している銀行・保険・携帯会社
- 借金やローンの有無
- 大切な書類の保管場所
- 鉛筆で書いて構いません。何度でも書き直せます
- 空欄があっても構いません。書けるところだけで大丈夫です
- 気持ちが変わったら、あとから直せばいいだけです
- 書かなくても、家族と話すきっかけになるだけで意味があります
- 書いたら、ノートの保管場所を信頼できる家族に伝えておいてください
今日からできる、3つのこと
- 重要書類を、一か所にまとめる
- 利用している金融機関と保険の「名前だけ」を書く
- 家族の誰か一人に、保管場所を伝える
家族に切り出すときの、ひとこと
かしこまった場を作る必要はありません。会話を始めるための例文です。
自分から家族へ
「もしものとき、みんなが困らないように、分かることだけ書いておくね」
子どもから親へ
「財産の話をしたいんじゃなくて、何かあったときに困らないように、連絡先や希望だけ教えてほしい」
切り出し方に迷ったら、親への切り出し方のコツもご覧ください。
体験して、感じたこと
突然その時が来ると、家族は本当に、何も分かりません。
だから、元気なうちに、最低限のことだけでも話しておいたほうがいい。
エンディングノートは、亡くなる準備ではありませんでした。
残された家族が迷わないための、思いやりの道具でした。
最後に父へ伝えた言葉は、
「お父さん、ありがとう」でした。
終活を進めたい方へ——目的別ガイド
このページは入口です。テーマごとの詳しい進め方は、それぞれの記事にまとめています。
この記事について
執筆・監修:はじめての終活ガイド運営者(終活カウンセラー1級)。本文の体験談は、運営者自身の経験にもとづいています。一般的な解説の部分は、公的機関の情報を確認のうえ執筆し、法律・税務の個別のご相談には専門家への相談をご案内しています。
- 参考(一次情報):法務省「死亡届」
- 公開日:2026年7月7日/最終更新日:2026年8月10日
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よくあるご質問
Q1. エンディングノートは本当に必要ですか?
なくても法律上の手続きは進められます。ただし、口座・保険・契約・連絡先・本人の希望を、家族が手探りで探すことになり、時間も心の負担も大きくなります。私たちの場合も、預金と借金の有無が分かっていただけで救われました。「家族が探せる手がかりを残す」ことに意味があります。
Q2. エンディングノートは意味がないと言われるのはなぜですか?
主な理由は3つです。法的効力がないこと、書いても家族が存在を知らなければ使われないこと、情報が古くなると役立たないことがあること。裏を返せば、保管場所を家族に伝え、年に1回見直すだけで、この弱点の多くは解消できます。
Q3. エンディングノートには法的効力がありますか?
原則としてありません。遺言によって財産の分け方を指定する場合は、方式を満たす遺言書が必要です。ほかに死因贈与や信託などの方法もあるため、財産移転については専門家に確認してください。エンディングノートは、希望や情報を家族に伝えるためのノートです。
Q4. エンディングノートはどんな人に必要ですか?
一人暮らしの方、家族が財産や契約内容を把握していない方、ネット銀行やサブスクリプションを多く使う方、葬儀やお墓に希望がある方、ペットがいる方は必要性が高いといえます。再婚や事実婚、お子さんがいないなど家族関係に事情がある場合は、ノートに加えて遺言書などの法的な備えについて専門家への相談をおすすめします。
Q5. エンディングノートには最低限何を書けばよいですか?
まずは5つで十分です。緊急連絡先、葬儀についての希望、利用している金融機関・保険・携帯会社の名前、借金やローンの有無、重要書類の保管場所。空欄があっても構いません。全部の項目を埋める必要はありません。
Q6. デジタル資産やパスワードはどう残せばよいですか?
パスワードや暗証番号そのものをノートに書くのはおすすめしません。紛失や盗難のリスクがあるためです。ノートには「どのサービスを使っているか」という存在と、確認方法・関連書類の保管場所だけを書き、秘密情報は封をした封筒など別の安全な方法で管理してください。
Q7. 書いたエンディングノートはどこに保管すればよいですか?
家族が「探せば見つかる場所」に保管し、ノートの存在と置き場所だけは信頼できる家族に伝えておいてください。書いたことを誰も知らなければ、必要なときに役立ちません。
Q8. 親にエンディングノートを書いてもらうには、どう切り出せばよいですか?
財産の話から入らず、「何かあったときに困らないように、連絡先や希望だけ教えてほしい」と伝える方法や、自分が先に書いて見せる方法が有効です。切り出し方のコツの記事で詳しく解説しています。
Q9. 親が亡くなったら、まず何をすればいいですか?
突然のことで、何も分からなくて当然です。最初からすべてを一人で完璧に進める必要はありません。一般に、死亡診断書(または死体検案書)の受け取り、家族への連絡、葬儀社への連絡、死亡届の提出(死亡の事実を知った日から原則7日以内・法務省)などが最初の数日に必要になりますが、状況やご家庭によって異なります。その後の役所や相続の流れは、当サイトの相続手続きの記事で時系列に整理しています。
今日、最初の1ページを
書いてみませんか
すべてを一度に決める必要はありません。まずは、連絡先と利用している銀行・保険・携帯会社、そして葬儀についての希望だけでも十分です。
エンディングノートの書き方を見る項目別の記入例つき